▼監禁1日目

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 正直、こんなに美しい容姿の男性が私を誘拐しただなんて、信じられない。もしかしたら、本当は助けに来てくれた人なのかもしれないとさえ思う。  ──でも、現実は残酷だ。 「……目が、覚めたのか」  男性は表情をピクリとも変えないまま、無関心を思わせるかのような口ぶりでそう言った。私はその言葉に対して何も答えない。  ジーッと私を見つめてから、男性は台所へと向かった。聴こえる物音から何かをしていることは分かるのだが、私は恐怖で顔を上げられない。  どれくらいの時間が経ったのだろうか。しばらくすると、男性は台所から出て来た。……私の好きなココアの香りを漂わせる、コップを片手に。  自分が飲むのだろうか……と考えていると、男性はベッドの横に置かれている机の上に、湯気立つココアが注がれたコップを置いた。 「……飲め」  男性はそう言い、机の横に腰を降ろした。  どうやら、このココアは私のために用意してくれたらしい。私がココアを好きなのをわざわざ調べたのだろうか。それとも、ただの偶然なのだろうか。  分からないけれど、危険な薬が入っているのではないかいうと不安が頭を過ぎり、到底飲む気になんてなれない。 「……飲まないのか?」 「……。……あの、」  私は恐怖から震える声を振り絞って出し、話し掛ける。 「……なんだ?」 「分かって、いるんですか? 自分が、何をしているのか……」 「……どういうことだ?」 「だからっ!……っだから、こんなことをされて、平然とココアなんて飲めるわけがないじゃないですか!」  自分の考えを言い切れたのは良いものの、その後に押し寄せて来る静寂が心臓を暴れさせる。
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