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──“誘拐”?
そんな単語が頭を過ぎる。
もしもそうならば、呑気に考えごとや、この一室のことについてあれこれ考えている暇はない。身体の重さに屈している場合でもない。
一刻も早く、この一室から逃げ出さなければ……!
私が今まで横になって眠っていたところはベッドの上らしく、そのベッドも言わずもがな全てが白い。シーツの肌触りがいいように思うのは……きっと気のせいじゃない。まさか、高級品?
乗ったモノの体重を支える、ベッドの4本の足を覗き込んでみると、濃い茶色の木で出来ていた。
そこは白色じゃないんだ……。白色と濃い茶色の色使いのせいか、余計に高級品に思えてくる。
いやいや、今はベッドが高級品だとか、そんなことはどうだっていいでしょ。変なところに関心が向いてしまった。
ベッドから降りようと急いで縁に腰掛けると、自分の視界より下からジャラリとした金属に似た音が聴こえた。
おそるおそる、顔を下に向けてその音の正体を確かめてみる。
「……えっ?」
鎖。
銀色に光るずっしりと重たい鎖が、ベッドの足から私の両手両足にまで伸びている。
そして、両手両足のそれぞれの首には、太くてゴツい鉄枷がはめられていた。
「そんな……」
……逃げられない?
私とベッドの足を繋ぐ鎖は、思っていたよりかは長さがあるように感じる。けど、ぱっと見た感じだと、玄関はおろか、台所にだって届かなさそうだ。
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