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白色のブラウスに、藍色のふんわりとしたスカート。
シンプルなデザインで……一見、味気なく見えるかもしれないけれど、さすがは高級ブランドの服といったところか、服の生地や触り心地など、すべてにおいて上質だ。
このシンプルな服でも、かなり値が張ったんじゃないかな……。そう考えると、桐生さんってかなりのお金持ちなのでは……?
大学と両立しながらのアルバイトで、そんなに儲かるとは思えないから……実は両親がすごい人達だったりして。
まさかね……と思いながら洗面所から出ると、玄関の傍に桐生さんが立っており、どうやら私が出てくるのを待っていたようだ。
「……!」
桐生さんは少し目を見開き、食い入るようにして私を見つめる。
「桐生さん……?」
「……まいったな」
「?」
「外出して……他の誰かの目に晒されることがもったいないくらい、似合っている」
なっ……!この人はまたそういうことをさらりと言うっ!似合っているわけがないと思うんだけどなぁ、この高級ブランドの服が、私みたいな一般的な人に。……でも、桐生さんの言葉がお世辞には聴こえないのは、不思議だ。
「……そんなふうに嘘を言って喜ばせようとしたって、嬉しくないです」
「嘘じゃない」
即答だった。
桐生さんはお世辞じゃなく、本当に似合っているって思っているっていうこと……?まさか、そんな……。
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