プロローグ

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新卒で着任して二年経たないうちに結婚を決めるっていうのは、早い方ではある。でも、俺にとってはもう待ちすぎるくらい待ったから、文句は言わせない。それだけの実績も積んできてる。味方もちゃんと作ってあるつもりだ。 だから、胸を張って進もうと思ってる。『迷惑かけてすみません』なんて、社交辞令であっても絶対に口にしないと決めている。 手作り挙式ではないけれど、やることはたくさんあった。 今日も、祥子とレストランディナーを予約してあるけど、そのあとは俺の部屋で式と、その後のお披露目パーティーの最終確認だ。 俺は、招待者名簿を作ったり引き出物を決めたりといった作業は結構得意だから、祥子がやりたいということ以外は全部引き受けた。それでも祥子に確認してもらうことは多かったし、うれしい忙しさ、だったかな。 戸籍に日付が残る入籍の日を、祥子の誕生日に合わせたかったから…俺は祥子の両親に承諾をもらって今朝、区役所に届けを出してきた。 二人そろっていければよかったんだけど、祥子はどうしても仕事を抜けられなかったから。 祥子は、一週間後の俺の誕生日との真ん中の日にすれば? なんて言ってくれてたけど、それだと何の意味もない日付になっちゃうからって却下。それに俺は一日も早く入籍したかったから。 ここまで来るのに…付き合い始めてから六年かかった。 俺が祥子を好きになってから数えると、何と九年。 十五歳の、今から思えば幼かった恋は、二十四歳の愛情に育っていった。 長かったようで、あっという間だったようで。 でもこれから先、二人で生きていく年月は今までの何倍も長い。
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