プロローグ

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プロローグ

俺が教師として小学校に努めるようになって、丸ニ年が過ぎようとしている。 3年生、4年生と二年間付き合ったクラスの生徒たちとは、おそらく今日でいったんお別れだ。まだ異動はないと思うけど、これ以上の持ち上がりもないだろう。 俺は4月から、教員三年生。多分次は、一年生の担任になるんじゃないかなと…思ってはいるんだけど、まだわからない。 教師という仕事は、春からどこでどんな仕事をするかが3月末までわからないという状態に毎年なる。年齢とか経験年数から、自分で大体の予測は着くけれど、辞令がでたら慌てて準備する…って感じ。 例えば都内ではあっても山の奥の方とか海の方とか、自宅から通うのが厳しい場所になることだって、ありえないとは言えないんだ。 わかっていて務めているんだけど、やっぱり東京って広いなと思う。 桜の幹が全体的にピンク色に染まり始めているのを見ながら、俺は裏門から足早に約束の場所へ向かう。すでに定時は過ぎているが、学校の職員室はどこも不夜城。最近はだいぶんましになってきていると、年配の先生たちは言っているが、それでも勤務時間はひどいもんだ。好きな仕事だから頑張るけどな。 今日は、大学一年のころから付き合ってきた恋人の誕生日。 もうすぐ恋人から妻になってくれる、大切な女性。 今日は、恋人同士として過ごす最後の彼女の誕生日だ。 最近は全部手作りで式や披露宴をプロデュースするカップルも多いみたいだけど、俺たちはそうしなかった。お互いそんなにこだわりが強いわけではないし、何より俺も祥子も仕事が大事で毎日帰宅も遅い。無理して手作りにこだわらなくてもいいんじゃない? ってことで一致した。
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