41人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
laststage:ハッピーフィナーレ
広美と、駆は広美の故郷岡山の奥地村に向かう為、ローカル線に乗っていた。
勿論、遅らせばせながら広美の両親に、ご挨拶と日原の爺ちゃん婆ちゃんに会いに行く。
まさに、二人の出逢いのローカル線。。
あれから、夫婦になって乗る日が来るとは。。互いに不思議な気持ちにかられていた。
車内は、学生などで割と混んでいたから、
二人はあえて会話はせずに、寄り添って眠っていた。
終点奥地村入口駅に到着した。
既に、奥地村では田沢さんところの広美ちゃんが、あのアイドルのハリケーンの羽沢駆と結婚したと知れ渡ってしまっていた。
広美が、婿さんを連れて里帰りだが、やはり相手が普通の人ではないから、村長が予め
-村民の皆様。あくまでもご本人達のプライベートでありますので、騒がれることなく静かにお過ごし頂きますよう、くれぐれもお願いします。-
と全村民に呼びかけてくださったので、大騒ぎにはならなかった。
が、やはり二人の姿を
アイドル羽沢駆の姿を一目見ようと、それなりの村民ギャラリーが出迎えていた。
但し、モチロン田沢家一族は、大騒ぎとなっていた‼
毎度、集結するけど、全?親戚がここぞとばかり大集結した‼
-あの大スターが来るんじゃ---‼-
-ハリケーン襲来じゃ------‼-
「いや~‼広美ちゃんが、まさか大スターを連れて帰ってくるとはのう‼で~れ~驚きじゃ‼」
「芸能界なんて、いくらでもペッピンさんおるじゃろうに、何で広美」
兄.智弘、本音キツスギ‼
「失礼じゃな----っ‼もぉっ‼」
駆は、事後報告で遅くなり申し訳ありませんと、若干緊張の面持で、きちんと広美の両親に挨拶をした。
父親は、「奥地村に、もうちょっと若くてマシなのが、おるけんが広美で、本当によろしかったのでしょうか?賞味期限が過ぎた娘でございますが宜しく頼みます。」と頭をさげた。
「もぉっ‼お父さんまで、皆、失礼じゃな~っ‼まったく‼兄ちゃんと一緒じゃ‼」
広美は、膨れた。
母親は、アイドル羽沢駆を目の前に浮き足立った。
「ようやっと貰い手がと思ったら、まさかこんなテレビに出ているようなお方とは。。実は娘が羨ましいですわ~。こんな私じゃなかった‼娘でよければ宜しくお願いします。」デレデレしながら頭をさげた。
…お母さん‼私じゃないって何じゃそれ~っ…
「一度は、そちらの埼玉の親御様にもご挨拶せんとなりませんねぇ。」
「必ずやその機会を作らせて頂きますので、どうか宜しくお願いします。」
その晩は、田沢家でお祝いの大宴会となった。
「いや~‼この人、まったくフツーじゃな‼テレビで見るあのアイドルと思えんじゃ‼」まったく飾らないアイドルオーラ無しの普段の駆は、そのキャラで、家族親戚にスグに溶け込んでいった。
翌日二人は勿論、日原の爺ちゃんのお墓参りにも、出向いた。
「爺ちゃん、広美が隣にいるから、驚いてるだろうね‼」
「広美、いかず後家にならんでヨカッタなぁって、笑ってると思う。」
…私たち、爺ちゃんからの奇跡のご縁で一緒になりました。奥地村から、見守っていてくださいね…
と二人揃って手を合わせた。ナ~ム~
…こりゃめでたいじゃ‼兄ちゃん、広美ちゃん。仲良くやっていくのじゃぞ‼…
日原の婆ちゃんのところにも寄った。
日原の爺ちゃん婆ちゃんは、駆のことを最初から兄ちゃんと呼んでいた。
「兄ちゃんが、まさか広美ちゃんを連れてくるとはなぁ‼たまげたじゃ‼」
「多分、爺ちゃんが引き合わせてくれたんだと思ってます。」
「いゃぁ、やはり東京は、凄いところじゃのう‼広美ちゃん‼こんないい男、捕まえてなぁ?」
「いやいや、婆ちゃん‼俺たちは、奥地村で出会ったようなものなんですよ‼」
「そうじゃったかぁ?兄ちゃんが一番最初にココに来た時は、何だか危なっかしい辛そうな顔した、兄ちゃんだったけど、今は、立派なアイドルさんで、しっかり嫁さんも貰ってなぁ!ワシャも嬉しいじゃ‼」
※※※
「でね、婆ちゃん。やっぱアレは1ヶ月にガンバっても1体で目一杯だわ、すまないね。」
「そうじゃろうなぁ、忙しいもんなぁ。だけど注文が、で~れ~来ているらしいんじゃよ‼」
「駆?注文って何のこと?」
「広美ちゃんには、黙っておったんじゃ?」
「はい、今日、明かしますよ‼」
3人は、村の小さな即売所に出掛けた。
店内には、地場産の新鮮な野菜、山菜、うみたて玉子。。手造り惣菜、手工芸品などが楽しく並んでいる。
「広美、あれがサプライズ。奥地村に行ったら分かるよって言ったヤツ」
陳列棚を、指さした。
二対になっている可愛らしい、変わったこけしが置かれていた。
二対は、何気にハート型で一体となっていて、その顔は、何処となく広美と駆に似せているようなユーモラスで可愛い表情に描かれている実に不思議なこけしだった。
大きさも、程よくてインテリアでチョット置くのに良いサイズ。
「なぁにぃ?この、こけしちゃんたち‼」
広美は、クスッと笑って手に取った。
「俺の自作品、
奥地村愛のこけちゃん,S‼」
「こ、これ売り出しているのっ?」
「広美と出会ってから、思いついて作り始めた。微力でも爺ちゃんの意思を継ぎたくて、で婆ちゃんとこに送ってから、店に置いてもらうようになったんだ。」
「売り上げは婆ちゃんのにしてと、このコ、受け取らんのじゃよ~」
「そんな、素人作品だし、お世話になってるお礼の気持ちっすよ!」
「でな、これが知るひとぞ知るで、すぐ売り切れて、欲しいって言ってくるお客さんが結構おるみたいなんじゃ。」
「最近、お買いになった女の子が、彼氏が出来ましたとか言いに来るんよ!このこけしが、縁結びじゃって、それが口コミで広まってるみたいじゃよ!」
レジのオバチャンが寄ってきた。
「まさか駆が、作っているのは皆、知っているわけないよね⁉」
「知らないよ!知りたがっている人もいるらしいけど、よその人、シークレットで通してもらってるよ。」
「村長が、このこけしちゃんが、もう少しメジャーになったら村のイメージキャラクターにしょうか考えてるみたいじゃよ‼」
…へぇ----っ‼駆は、とっくに奥地村にとけ込んでいたんだね。。…
帰りのローカル線車内。。
乗客は、広美と駆 二人きりだった。
最初に出逢った時と同じだ。
「私たち。。このローカル線に、行きしな、たまたま隣り合って座って、互いに寝ちゃって頭がぶつかっちゃったのが、キッカケだったんだよね。」
「うん。あの時は俺、ホントに寝ちゃってたな。」
「で、駆が、確か声かけてきたんだよね。。」
「えっ?俺が?広美から声かけてきたんじゃないの?」
「えぇっ?駆からだよ‼確か里帰りですか?みたいな」
「そうだったかなぁ。。」
「最初、このオバさんにナンパ?って思って私、引いていたんだから‼」
「まぁ。。これってナンパだったのか~
うん、広美は最初かなり引いていたね‼」
「でもさ、どういう気持ちだったの?最初って」
「いいの?ぶっちゃけて」
「いいよ!知りたいと思ってたもの。」
「広美が、いつ俺のことに気がついてくれるのか、まず見たかった‼」
「マジで-----ぇっ?」
「気がつくまで、結構かかったから、かなり楽しかったよ‼」
「。。そんな動機かいな‼まぁ、そんなもんかぁ。。まさかアイドルが身近にいるなんて思うわけないもの‼隣席に、そんな人がいるなんて思わないよ‼」
「俺、アイドルオーラ、ないからね‼」
駆は、目を細めて笑っていた。
「だから、ヨカッタんだもん。。。」
広美は、はにかんで、そっと手を駆の手に重ねた。
駆は、広美の手をしっかり握り返した。
「実はね、こけしルームに、愛のこけちゃん,S一作目を大事にしまってあるんだ。
帰ったら見せてあげるよ。」
「一作目が、ウチにあったんだ?」
「一作目は、広美とこのローカル線で出逢った後に、スグに作り始めたんだ。」
「そうなの?」
「ローカル線で、隣席になったあの女性とまた、会いたいなって。アイドルやってる俺だけど、広美にまた会えますようにって思いながら作っていた。」
駆は、照れくさそうに話した。
広美は、黙ったままうつ向いていた。
やがて、熱いモノがこみ上げて来て、駆の胸に寄りかかった。
「駆。。ゴメン。。嬉しすぎて。。」
「俺も。。広美が隣に座っていてくれて嬉しかったよ。」
駆は、手をまわし、しっかりと広美の肩を抱いた。
-奇跡の出逢いのローカル線-
二人は隣席に座っていた。
:本編END:
最初のコメントを投稿しよう!