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神様と外に出ると、海に大きな船が来ていた。
この中に国王が…。
船ごと破壊したい衝動をおさえる。
と、船からぞろぞろと人が出てきた。
鎧をまとった兵たちが数十名に、その真ん中に太った男が一人。
王冠を被り、赤い布地に金の刺繍が施されたマントを身につけている。
こいつが王で、兵たちは近衛だろうか。
近衛らしき兵の一人が一歩前に出て声を張り上げた。
「こちらは我がラオントス王国の偉大なるセクド・クレイ・ラオントス王である!控えよ!」
…は?
私は耳を疑った。
えっと、コイツの軍を私がボコしたんだよね?
キッド曰く、両国が了承した戦争ではない場合、いかなる理由があろうと相手国の国民やその使い魔、領土に手を出すのはご法度なんだそうだ。
ちなみに、その場合に手を出された側が反撃するのはアリらしい。
今回はラオントス王国側が勝手に始めた戦争だ。
私や使い魔に手を出し、アートイス王国の領土のヤクルの森に手を出し…と、ラオントス王国側に完全に非があるのである。
それなのに、こんな態度を取れるとは…ある意味尊敬する。
しかも私、十二万の軍ボコしたんだよ?
警戒とかしなくていいの?
驚き過ぎて固まっていると、さっきの兵が私をきっと睨んだ。
「あん?控えよと言ったのが聞えなかったのか?」
いや別に、そういうわけではないけれども。
すると、国王が口を開く。
「よい。余を前にして畏縮しておるのであろう。まあ、そうでなかったところで、アートイスの下級貴族に礼儀などは分からぬ。山猿よりはマシといった程度であろうよ」
「フン。国王の寛大なお心に感謝するんだな」
マジか。
国王もこの態度かよ。
国王はもうちょっとマシかと思ったんだが。
もう驚きすぎて動けないし、ぶつけようと思っていた怒りもどっか行った。
「さて、この余がわざわざ魔物臭いこの地に来てやった理由が知りたいであろう?」
いや別に来てくれとか言ったおぼえないし、そもそも来てほしいなんて微塵も思ってないし。
てか、帰れよ。
「余はな、警告しに来た」
「…は?」
思わず心の声が口に出た。
が、国王は気にせず話し続ける。
「知っておると思うが、今、ワカウン平野で余の国と貴様らの国が戦っておる。兵の数は二万対三万だと聞いておるかもしれんが…まぁ、余の国がじき勝つ。理由はいずれ分かるであろう」
…えっと、この人何言ってんの?
情報の伝達ミスですかね?
「余はその戦が終われば、兵たちをここに向かわせるつもりである。ここは一度ハングに余が来るからと掃除を頼んだのであるが、少しは魔物臭さがマシじゃの。まあ、本格的に掃除に入るのはこの後じゃが」
怒り再沸。
イライラしながら国王の話を聞き続ける。
「そこでだ。何故余がここの掃除に乗り出したか、分かるか?」
「あ?知るかよ」
「な、貴様!国王になんという言葉を!」
うるさ。
「まぁよい。して、理由であるが…貴様が、余の国の専属商人を誑かしたからである」
商人…って、ミョウンさん?
専属商人て…マジか、そんなにすごい人だったのか。
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