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ゆっくりと国王に歩み寄る。
「ぅ、ぅぁああぁぁ!く、来るな、来るなぁあぁああ!!」
その時、さっき飛んでいった伝令が戻ってきた。
「お、おぉ!よくやった!兵はいつ来るのだ!?」
「そ、それが国王…」
伝令の兵が顔を青ざめさせたまま答えた。
「全滅に、ございます」
「…なんだと?」
「我が国の兵は、もう誰一人として残っておりません!」
伝令の言葉に、国王が顔を真っ赤にする。
「そんなわけがあるか!十二万であるぞ!?もう一度調べよ、貴様は場所を間違え――」
「いいえ、国王。亜人の隊の無数の屍が、残っておりました」
「な、んだと」
国王が顔を恐怖に歪めて私を見た。
「ね、だから言ったでしょ?」
私は国王の目の前で歩みを止める。
「私、」
ドスッ
国王が剣を私の胸に突き刺した。
「…え」
「ふ、ふはは、ふはははは!馬鹿めが!油断しおったな!これで余の勝利――!」
「…ばぁか」
服に血を滲ませながら私はにやりと口角を上げた。
「残念でした!」
少し離れたところから声がした。
それとほぼ同時に、王の剣に胸を貫かれた分身が、光る泡になって消えた。
その後方、拠点の前で、私は笑って立っていた。
「な、分身だと…?」
「いやぁ惜しかったね、国王サン」
私は、縁側からぴょんととびおりた。
「く、くそ!」
「このからくりはねぇ、」
おっと、ことを片付けきる前に作戦をバラすのはフラグだね。
「やっぱ秘密」
私はにこりと笑って人差し指を口に当てた。
「さてと、国王サン。あんたは殺さないよ」
「ほ、本当か!何が条件だ!?言え!金か!?地位か!?土地か!?何でもしよう、そのかわり本当に余を助けるのだ!」
国王が泣き喚く。
「うるさいなぁ。殺さないって言ってるでしょ」
私が耳をおさえながらそう言うと、国王は安堵の表情を浮かべた。
「さぁて、どう料理しようか」
が、私の一言で、また恐怖に顔を引きつらせた。
「な⁉は、話が違うではないか!余は殺さぬのであろう!?」
「うん、もちろん」
私はちりとりソードに手をかけて言った。
「簡単に死んでくれちゃ困るよ?あんたには、たくさん苦しんでもらわないとね」
「そ、そんな…!?ぐぉおおぉああぁあっ!!」
森の一角に、国王の悲鳴が響き渡った。
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