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ニートの日常、崩壊
やばい。非常にやばい。何故どうしてこうなった。
目の前で、人の気を知ってか知らずか、名前も知らないイケメンさんがニコニコしている。
私は一人、数十分前の出来事を思い返す。
今日も私は楽しい楽しいニート生活を送っている。まぁ、学生だけど。
12歳にしては背が低い、私小野志織は、色々と中途半端です。
え、突然すぎ?気にしない気にしない、きっと世の中そんなもんだわ。
で、何が中途半端かというと。
絵は、得意な方だけどまあ上手いというわけでもなし。
読書も好きだけど、別に読むスピードが異常に早いというわけでもなし。
数学はまあまあ好きです。
社会もまあまあ好きです。
漢字もまあまあ好きです。
え、顔?ハッ、お話の主人公だからって期待すると痛い目会うぜ。まあ、可もなく不可もなく、うん…まあそういうことだ。
ピアノは、耳コピはできる。ほぼ主音だけだけど。ていうか、まともに弾ける正当な曲が一曲しかない。
こんなかんじの自己紹介がたらたらとつづく。
ついでに運動音痴だ。これは中途半端とかそんなかわいいレベルではなく、壊滅的である。
唯一自慢できるのは、IQかな。人間の平均IQが100なのに対し、私はIQ140である。世界ではIQ130以上の人を「ギフテッド」、つまり神に選ばれた子と呼ぶらしい。けど、残念なことにIQ140はまだゴロゴロいる。おそらく200人に一人とか、2000人に一人とか、そんな感じ。本当に凄いのはIQ150からで、確率はぐっと下がる。てことで、この結局このIQも中途半端なのである。平均より高いってことは否定し(たく)ないけど。
あ、一応いっとくと、私は元素ヲタクと日本国憲法かじりかけ、そして筋金入りの古生物ヲタクっていう立派な称号があるんだったよ、あはは。
あー笑えない。なんか自分の能力値が悲しくなってきた。
ねー、あなたもそう思いますよね。そこのコスプレイヤーっぽい人。
あ、コスプレさんがこっち向いた。
こんにち、おー。
コスプレさんキレイだ。私とは次元が違うね。わーすごい美人、え、男子?じゃあイケメンさんだねー。
照れてる照れてる。いやあ、キレイな人はどんな仕草でも似合うね。
ほら今も、私のお気に入りのグレーのカーテンを背景に、繊細な顔立ちがよく映える。
…ん?なんか違和感が。
いやでも、グレーのカーテン、木製の勉強机、本棚。まぎれもなく、いつもと変わらぬ私の部屋。
…ん?私・の・部・屋?
だー!何勝手に人の家上がりこんでんだお前⁉不法侵入で訴え、ん?
「つかお前、誰だよ⁉」
―今に至る。
いや私としたことが、ボーっとしてて部屋の中にいつのまにかいた彼に気付けなかったよ。
で、その彼はまだ私の目の前でニコニコしている。
私が何故彼をコスプレさんと言ったか…は、おそらく、大体想像がつくだろう。
だってこの人、服が日本じゃない。
かなり混乱していて日本語が少しおかしくなった気もするが、気にしない。
それだけ、彼の着ている服は、変なのだ。
まず、見たことのない柔らかそうな素材がたくさんある。
コバルトブルーのベスト。そのボタンは、淡く落ち着いた金色。
清潔そうな白いシャツ。その整えられた襟の前で結ばれている、黒に近い茶色のネクタイ。
ネクタイより薄く、手入れが行き届いた花壇のような茶色のズボンには、しわが見つからず、しっかりと折り目がある。
決して華美過ぎることはない。ないのだが、全身から高級感が醸し出されている。
ついでに言うならば、めっさイケメン。
サラッサラの金髪にきめ細やかな肌。形の整った目や鼻などの顔のパーツは、美形のお手本のような位置に配置されている。
つまり、まとめるとこうだ。
何だコイツ。
いやね、私イケメン見て目をハートにするような趣味はないんよね。
しかしだね。
「いやぁ、やっぱり君、面白いねー。僕、増々君のこと気に入ったな!」
なんだこの初対面なのにこの打ち解けた感じは。
「改めて自己紹介するね。僕はね、ざっというと、この世界の管理人の一人で、まぁ要するに神様だよ!」
結論は一つだ。
「お帰りくださいな☆」
「え、なんで。僕一応神様だよ?びっくりしないの?」
え、なんかコイツ真面目に言ってるぞ。しかし私はちょっとした変人に付き合うほど気が長くない。
「お早めにお帰りください☆」
「えぇ、信じてよー。あ、これならどうかな!」
これってなんだ、というより先に、神様(自称)が自分の顔の前で手を合わせる。すると、手の中から光が。
「志織ちゃんは、何が欲しい?」
「現金」
ハッ、なりゆきで答えたけど、つい本音が出てしまった。
が、神様はそんな私の欲深さをとがめることもせず、相変わらずニコニコしながら、
「現金だね!分かった!」
などと返答している。
「いくよー」
パチン、と神様が指を鳴らすと、天井の方から札束が一つ落ちてきた。
大事なことなのでもう一度言いますね。
札束が降ってきた。
まぎれもない、一万円札の、札束が。
「それでねー、僕神様なんだけどねぇ、」
イケメンさんがにこやかに話し出す。
「…マジで?」
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