融解点

1/1
前へ
/1ページ
次へ
目を瞑って暗いと言う 耳を塞いで静かだと言う 世界は救いがないと笑って 君は海に沈んでいった ここに跡があることを 君は一生知らないだろう 潰れてしまったこの光は 君の上にあったんだよ ひしゃげてしまったこの音は 君を呼んでいたんだよ 地面にぽっかり円を作って 君がいた跡があるんだよ なぞればどれもあたたかいのに 君の手はそれを知らないんだろうね ひとりぼっちの扉を閉じた その手が最後に触れたのは 凍てつく冷たさだっただろう いつかいつか海の底で 鱗が波にさらわれて 身体が軽くなったなら もう一度浮かんで来られるかい そうしたらきっと君はすぐに 光と音に気づくだろう 願わくば安寧の暗闇を 君が静寂に抱かれていますように
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加