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大慌てで髪を乾かして、でも結局半乾きでベッドへ倒れ込んだ。
電気を消してくれと懇願するのを説き伏せ、間接照明をひとつだけ残す。
薄明かりに照らし出される岸上の裸体は隼人をますます駆り立てた。
どんなに自信がないと本人が言っても、全身から滲み出す色気は皆の認めるところだ。
唇を重ね、岸上を仰向けに寝かせて、首筋からキスの雨を降らせる。
身を捩って逃れようとするのを、力づくでベッドに繋ぎ止めた。
舌を臍あたりへ這わせていくと、岸上の腰がビクンと跳ねる。
これ以上抵抗させたくなくて、中心にあるものを素早く口に含んだ。
「……隼人くんっ!……」
喉の奥へ押し込んでいくと、半立ちだったそれは即座に固さを増していった。
「あぁ……」
唇で締め付けながら上下に擦りあげる。緩急つけた愛撫に、岸上も言葉をひっこめた。
思いのほか高まるのが早く、岸上は悶えはじめた。
「そっ……そのへんで、もう……」
10も年上の男をこうも上手に操っている、という優越感もあるし、なにより岸上が気持ち良さそうにしているのを見るのが好きだった。
「やめませんよ」
もうゴールが近いことを自ら認めてしまったのだ。
隼人は焦らすように根元のふくらみを舌で転がし、先端へゆるゆると舐めあげていった。
透明な汁をこぼしながら、岸上は震えている。
唾液で濡れそぼってすっかり敏感になった分身を、口の粘膜で包みこむ。
だんだん摩擦のスピードを上げていくと、頭上から小さな声が聞こえた。
「うっ……あ……、ん……!」
そのタイミングは隼人にはよくわかっていた。
感極まって勢いよく吐き出された液体を、手のひらで受け止めた。
最後まで絞り出し、激しく息をつく岸上の様子をうかがう。
「気持ち良かったですか?」
「……ん……」
体をずり上がらせた隼人から、顔を背ける岸上。
注意がそれているうちにと、手を下へ伸ばした。
肉の薄い尻を少し持ち上げても、反応はない。
窄まりを探り当て、岸上自身の体液を指先で塗りつける。
ぐったりしていた岸上の口から、「あ」と声が漏れた。
あやすようにくちづけながら、指を埋めていく。
「……痛くないですか?」
とりあえず尋ねるが、やめる気などさらさらない。
幸い返事がないので、入口を解しつつもう一本、指を挿入していった。
「あったかいですね、ここ」
言いながら中を捏ね回す。
岸上は目をぎゅっと瞑り、耐えていた。
心の中で謝ってはみるけれど、我慢も限界だった。
「力抜いてくださいね、もう一本いきますから」
たぶん隼人の指に意識を集中しているのだろう。これから起こることに息をのんでいるのがわかる。
ぬるぬるした指をさらに追加したら、一瞬呼吸が止まったようだ。
「大丈夫ですか?」
黙ってこくんと頷いてくれた。そのしぐさがなんとも愛おしく、隼人の猛りが増していく。
もう謝ることはせず、すっかり柔らかくなったそこへ先端を押し当てた。
「は、隼人くん」
目を開けた岸上が、ふいに言った。
「……あの、ゆっくり……」
「わかりました。ゆっくり入れます」
初めてのことだから、岸上には多大な負担をかけるだろう。
隼人は先端を収めて少し待ってから、じょじょに体を進めていった。
「う、あ、あ」
「痛い?」
本当は痛いのだろうが、岸上は首を横に振った。
申し訳なく思いながらも、全部を中に収めてしまうと、ようやく一つになれたという喜びが襲ってきた。
「繋がってますよ、岸上さん」
「……う」
何かを耐えている岸上の股間が、また頭をもたげていた。
隼人はそれに手を添え、ゆっくり腰を引く。
「あぁ!!」
再び奥へ押し入ると、握りこんだ分身はぴくぴく反応していた。
「気持ちいいとこ、わかります?」
内部をぐりぐり掻き回し、その場所を突っつくと、体全体が跳ねた。
触れている肌は汗ばんで、快楽が痛みに勝っていく様子がはっきり見てとれた。
「ちょっと動きますよ」
いちいち説明するのもいやらしい。しかし岸上を安心させたかった。
顎を上げて喘いでいるのを確かめると、隼人は抽送を速めていった。
途切れ途切れの声が、激しい息遣いの合間に聞こえる。
しまいには両脚を持ち上げて、楔を打ち込むようにスピードを加速させ突いた。
濡れた粘膜の擦れる音、ふたりの吐息と声が、薄闇に溶けていく。
隼人が耐えきれなくなって精液を吐き出したのと、岸上が再び達したのとはほぼ同時だった。
もう一度シャワーを浴び、服を着てベッドに入るとすぐ、岸上は眠ってしまった。
隼人は体こそ疲れていたが、先ほどまでの出来事に却って目が冴えてきた。
携帯電話を手に取り、電源を入れる。
梶からメールが届いていた。
“部屋に戻る時は電話してください”
もう鍵をかけて寝ているのだろう。
自分の身勝手がたくさんの人に迷惑をかけていることを反省する。
ただ、好きという気持ちを抑えるなどできるはずがない。
傍らで眠る岸上から離れ、窓を開ける。
雨はまだ降り続いていて、明日の撮影は午後からになるだろう。
朝はふたりでのんびりできそうだった。
ベッドに戻って、静かな寝息をたてる恋人の頬にキスをする。
これからも色々、厄介なことが起こるのかもしれない。
それでも岸上を誰か他の人に譲るなど想像もできず、何があっても守り抜くと強く決意を固めた。
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