7 断崖の殺人

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7 断崖の殺人

増井に連れて行かれた旅館「かつら亭」では推理作家と漫画家による座談会が行われることになっていた。 交通費・宿泊費はタダ、座談会の謝礼も割高設定だと言われて宮原は仕方なく従ったのだ。 集まったのは、いずれも同じ出版社「日煌社」で執筆している人気作家である。 まずは近重吾朗、40歳。少年漫画雑誌「少年ドカン」にミステリ漫画を連載中で、作品のヒットを受け、映画化が決まったという。 それから川里光義、40歳。中堅どころの推理小説作家で、どちらかといえば寡作な方だ。近重とは大学が同じで、ミステリ研究会に属していた。当時一緒に作品の構想などを語り合った仲だというので今回、呼ばれたらしい。 宮原がメンバーに選ばれたのは、日煌社の子会社である「三栄社」で今期ナンバーワンの売上を記録したからだ。ドラマ化・映画化された「千葉探偵シリーズ」は今も部数を伸ばしており、ずいぶん業績に貢献したとのこと。 場を束ねる意味で「少年ドカン」の編集長が来ることになっている。宮原とは面識がなく、座談会で話す話題もない。 増井に言わせると今回は“映画化記念慰安旅行”なので、ゆったり構えていればいいです、というのだが。 作家たちはそれぞれの担当編集者を連れていくことになっていた。増井は川里の担当編集者と仲良くしていて、「かつら亭」を予約しようと言い出したのは彼だったと話した。 そしてもうひとつ、宮原は旅館に向かう車中でこっそり、驚きの事実を聞かされた。
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