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エピソード18
気が付くと、家の前にいた。無意識のうちに足は歩を進めていたらしい。
目に映るのは、細い背中。
昨日、私を嫌いだと言った彼女だ。いつの間に住所を突き止めたのだろう。
彼女の手が、私の家のチャイムを押す。
もう、限界だった。
私は着いたばかりの家に背を向けて走り出す。
疲弊しきった頭に浮かぶのは、美桜の事だ。
彼女もこんな気持ちを味わったのだろうか。
手帳の中に綴られた、彼女の悲しみ。
『死にたくない』
そして
『好きになってもらいたい』
私は導かれるように、あの場所に向かっていた。
まだ電気がついている。階段を駆け上がり、冷たいドアノブに手をかける。荒い息を吐きながら、ドアを開けた。
「…お願いがあるんです」
あり得ない事だと分かっていた。だけど、彼以外に、私には縋る事の出来る人はいなかった。
「私を…好きになってください。そうしないと、私は…」
彼は驚いたように私を見る。
「お願いです。…貴先生」
脳裏に浮かぶのは、泥の中でもがく、浅ましいトカゲの姿だ。
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