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エピソード4
刻々と変化する空の色を、教室の隅で膝を抱えたまま、ただ眺めていた。
胸を占めるのは、生きたいという思い。
3歳下の妹が産まれた時だ。私は自らが日陰者だと悟った。生まれながらに周囲を惹きつける彼女の側で、私は影でしかなかった。可愛い妹。天使のような微笑み。常に彼女が一番で、私の優先順位はずっと後。嫉妬を感じなかったわけではない。だけど、その生き方は私の心にすとんと落ちたのだ。自分にも他人にも期待しない。誰も必要とせず、誰にも必要とされない。孤独で気楽な日陰の人生。
私はずっと、この世界と同様、自分自身の事も「どうでもいい存在」だと思っていた。夢も希望も、感じた事などなかった。
だけど今、私はこんなにも生きたいと願っている。
枯れ果てたはずの涙が再びこみ上げる。先ほどまでとは別の涙。
この世界を、自分を、決して手放したくはない。
薄闇が満ちる教室の中、私はゆっくりと立ち上がる。
先生は言った。
「嫌われずに生きていくことは不可能だ」と。
そして、メモの裏側のメッセージ。
『クラスの中に同じアザを持つ生徒がいる』
同じアザ、つまり、私と同じ病にかかっているクラスメートがいるという事だ。「嫌われずに生きていくことは不可能」な世の中で、その生徒は生きている。それは、この病には何か対処法があるという事だ。
廊下へと続くドアを開ける。
何故、先生がこのメッセージを書いたのかは分からない。だけどきっと、これ以上は教えてもらえないのだろう。その生徒を探そう。そしてこの病への対処法を聞くんだ。そうすればきっと、私は助かる。
絶対に、死にたくない。私は一歩踏み出す。
ただ一つ、胸をかすめた不吉な予感に私は目を背ける。
美桜は、その対処法を知っていたはずだった。
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