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「……私が好きでやってることですから」
女はムッとして、でも震える声で俺に反抗してきた。
「樋口くんには、関係ありません」
ーー関係ない。
確かに、その通りだ。
コイツは勝手に黒猫に餌をやって、それで満足してる。俺はただ、そこに居合わせただけ。彼女の金の使い方に口出しする権利もない。
「まあ、そーだな」
そう言うしかなく、けど反論の余地がないことに腹立たしくて、俺は口を尖らせて悪態づくような声色で答えた。
俺たちの間の空気なんて、意に介さない猫が食事を終える。
「じゃあね、ラッキー」
「ラッキー?」
黒猫の頭を撫でた女の言葉を、反芻した。何だそのダサい名前。
そんな俺の考えを、声色で読み取ったのか、クラスメイトは顔を真っ赤にした。肌が白いから、その変化がすぐに分かる。
「食べ物の提供者を見つけた、ラッキーな子だから……」
言い訳するように、モゴモゴ口の中で恥ずかしそうに答える彼女から、俺は目を逸らした。
まあ、どう呼ぼうが「関係ない」よな。
俺は再びゲームを再開し、彼女は「じゃあ、お先に」と戻って行った。
お前が先に行こうがどうしようが、俺は教室には行かないけど。
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