初恋の君…、俺のリベンジ物語

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「お兄ちゃん、友達がお見舞いに来てくれたよ!どうぞ」詩織の声が聞こえる。  友達?友達と呼べるような奴は……、生川か……、学校のプリントでも持ってきたのだろうか。あまり話したくないので俺は布団を頭から被って顔を隠した。 「どうも~」あれ、生川の声ってこんなにキーが高かったっけ?  しばらくの沈黙が続く。 「山本見っけ~!」その声と同時に掛け布団が一気に剥ぎ取られた。 「きゃー!!」俺はなぜか乙女のような悲鳴を上げてしまった。落ち着いて見上げるとそこには、昌子と恵の姿があった。昌子は布団を手に持ち笑っている。 「具合はどう?」恵が小さな声で聞いてくる。 「具合って、まだ文句があるのか!?」俺は起き上がると昌子から布団を奪い返した。 「……」恵の返答はない。 「あっ、これがもしかすると恵の?」昌子は棚に飾るように置いてある縦笛を指差した。 「「あっ!!」」俺と恵はシンクロするように声を上げた。恵は真っ赤な顔をして下を向いた。 「この少女漫画もそうか?で、体操服は?」昌子はなんだか嬉しそうに俺の部屋を物色している。 「体操服は……、引っ越しの時に捨てた。俺ずっと自分の気持ちしか考えてなくて……、天野を虐めてたつもりは無かったんだ、でも実際は……ゴメン」俺はベッドの上で正座して土下座するように謝った。 「私は、絶対に許さない。あの山本直樹にされた事を……」恵は目に少し涙を貯めている。 「ちょ、ちょっと恵……」昌子が珍しく困ったような顔をして恵を(なだ)めようとしている。 「でも……、今のあなたは……、あの山本直樹とは、違う山本直樹君だと思う事にするわ」 「えっ!?」俺は彼女の言っている意味が理解出来なくて顔をあげた。 「恵、素直に好きって言っちゃいなよ」昌子が口を出す。 「ば、馬鹿な事を言わないで!私がこんな奴好きな訳無いじゃないの!!」恵は強烈に否定する。  俺は唖然としながら二人の顔を見ている。 「でも、山本も鈍感だね。恵の態度見てたら気持ち位解るでしょうに」昌子は呆れている。 「いや、でも、それは彼女の俺へのリベンジで……」 「最初はそうだったけれど、恵も山本を好きになっていったんじゃない。もう子供じゃないんだから二人とも素直になりなさい。恵が要らないなら、私が山本貰っちゃおうかな」そう言うと昌子は俺の隣に座ると腕を組んで胸を押し付けてきた。 「それは駄目!……あっ!!」恵は俺の腕を掴んで引き寄せる。なんなんだこのパラダイスは……。 「俺も、やっぱり天野の事が好きだ。あの頃からずっと……」俺の言葉を聞いて、恵は更に顔を赤らめている。 「お兄ちゃんがこんなにモテるなんて、きっと天変地異がくるわ」廊下の詩織が青い顔をして呟いていた。  こうして、俺のリベンジは達成されたのだった。
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