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教室に到着するとなんだか騒がしい事に気が付く。
恵の近くに人だかりができているようだ。それはなんだか異様な雰囲気を醸し出していた。
「どうしたんだ、一体何事なんだ?」俺は辺りを確認しながら自分の席に座りながら生川に聞く。なんだか生川は少しニヤついているように見えた。
「ああ、どうやら野球部の大井が天野に交際申し込んだみたいだぜ」俺の耳元で少し小さな声で話し出した。
「なに!?」突然の事に俺は驚きを隠せないでいた。
「いや、この間俺と篠原、お前と天野の四人で遊びに行った事が広まったみたいでさ。ずっと天野はガードが堅いって有名だったんで遠慮してた奴らが挙って天野に付き合ってくれって言っているみたいだぜ」いや、その情報を拡散したのは間違いなくお前だろう。俺は心の中で生川の顔を思いっきり殴打していた。俺達があのテーマパークに行った事など俺は誰にも言っていない。彼女達がそんな事を言いふらすことも可能性としては低い。となれば情報源はまず間違いなくこの男であろう。俺は様子を窺うように椅子から立ち上がり聞き耳を立てた。
「な!天野、返事は今度でいいから」大井という男子生徒はそう告げると教室の中から出て行った。彼は同学年で隣のクラスだそうだ。野球部のピッチャーでキャプテン、男の俺が見ても女子が放っておかないであろう。大井が教室を出ていく際に俺の顔を睨みつけたような気がした。
キャー!教室の女子生徒達が異様に盛り上がっている。どうやら恵と大井にやり取りをずっと息を飲んで見守っていたようだ。
「ねえねえ、天野さん!大井君とだったらお似合いよね」
「絶対付き合うべきよ!みんな大井くん狙っているんだから!」
「私もずっと好きだったに!悔しい!!」彼女達は地団駄を踏んでいた。
俺は女子生徒達の間を掻き分けて前に進む。「おい!天野、あいつと付き合うのか?」俺は彼女の席の近くに行き尋ねる。俺の顔が引きつっている事が自分でも解っている。
「な、なによ!あなたにそんな事関係ないでしょう。放っておいてよ」恵はプイッと顔をそむけた。突然の俺からの問いに驚いたようでもある。
なにやら教室の中がざわめいている。どうやら俺の行動が女子生徒達には奇行に見えたいようだった。それを無視しながら俺は自分の席に腕組みをしながら座る。
「どうだった?」生川の奴が遠慮なしに聞いてくる。
「うるせえ!」俺はぶっきら棒に答えた。元はと言えばお前のせいだろうと言いたいところであったがその言葉は呑み込むことにした。
教室の隅で篠原昌子がニヤリと笑っているように見えた。
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