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「どうしたのよ?こんなところに呼び出して・・・・・・」それが開口一番惠の言葉であった。彼女は俺に背を向けて校庭の景色を眺めているようだ。その視線の先には昼休みに戯れる生徒達に姿があった。
爽やかな風が駆け抜けている学校の屋上。意外と昼休みにこの校舎の屋上に出られる事を知らない生徒が多くここは穴場なのである。辺りに人がいない事を確認してから俺は彼女に向かって思いの丈をぶつける。
「いや・・・・・・、どうしても天野、君に言わなければいけない事があって、その・・・・・・」俺は緊張のあまり、声と体が微妙に震えている。
「えっ!?」惠は驚いた様子で振り返った。彼女も何かを察したのか顔を少し赤くして自分の足元を見つめている。
「俺さ、小学生の時に天野と同じクラスだった時、ずっと君ばかり見ていた」そう俺は小学生の頃から惠だけを見ていた。彼女の笑顔、怒った顔、泣き顔その全てが俺の心に刻み込まれている。
「・・・・・・」彼女は黙ったまま俺の話を聞いている。その最中一陣の風が吹き彼女の髪が嫋やかに揺れている。その髪が太陽の光で照らされて金色に輝いていた。まるでブロンドの少女かと錯覚してしまうほど美しい。
「あの頃は授業中も休み時間もずっと君の事ばかり考えていたんだ」その思いは今また復活した、この数カ月は惠の事ばかりが頭の中を巡り勉強も正直手につかないような状態であった。
「・・・・・・」
「それで君が居なくなったあの日、君が転校していったあの日、俺は気づいたんだ」俺の心臓の鼓動がMAXの如く脈打っている。
「何を気づいたって言うの・・・・・?」惠は真剣な目で俺の顔を見つめる。
「君への思い、俺は君の事がずっと好きだったんだ。こうして君と再び会えたのはきっと運命なんだ。あれから後もずっと天野の事が忘れられなかった。他の女の子には一切興味は無かった。ずっと君だけを想い続けてきたんだ。だから俺と・・・・・・・、付き合ってくれないか」
「・・・・・・・」惠は返事もせず真っ直ぐ俺の顔を見たままだった。俺は彼女の両肩を優しく掴んだ。それを合図にするかのように彼女はゆっくりと目を閉じた。その表情を見て俺はゴクリと唾を飲みこんだ。夢にまでみた惠が俺の目の前にいて、まさにその唇でおれを受け入れようとしてくれているのだ。彼女は大きな瞳を閉じて俺の唇が重なるのを待っている。
惠の心臓の鼓動が俺にも伝わってくる。
俺は彼女の両肩を強く握りしめて目を閉じ彼女に唇を重ねる。
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