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「ふぅ~」恵は窓の外の景色を眺めながらため息をついた。すでに授業はすべて終了しており生徒達は帰り支度を始めている。校庭は帰っていく生徒達の姿で溢れていた。
視線を、山本直樹の席に移した。あの日から一週間程度の日数が経過したが、彼は病欠ということで長期休んでいた。
「恵、どうしたの溜息なんてついちゃって」昌子が鞄を肩から下げて近づいてきた。
「べ、別に溜息なんてついてないわよ。そ、そう深呼吸をしていただけよ」恵は大きく息を吸ってからゆっくりと吐き出した。
「恵も解りやすい性格よね」昌子はすでに帰宅した恵の隣の生徒の席に足を組んで座る。
「な、なによ解りやすい性格って、私は別に山本君の事なんて考えてないし!」
「私は、山本の名前なんて一言も言ってないわよ」昌子はニヤリと意地悪い笑顔を見せた。
「もう……」恵は恥ずかしそうにして机に踞った。
「たしかに小学生の時の話を聞いたらどうしようもない奴だって思ったけど、今の山本は結構いい男どよね。私が取っちゃおうかな」
「えっ!?」恵はあわてて昌子の顔を見た。
「なんちゃってね」昌子はペロリと可愛く舌を出した。
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