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四月、新しい生活が始まる。高校の編入試験も難なく突破する事が出来た。まあ、よっぽどレベルの高い高校を希望したのであればこうも簡単にはいかなかったであろう。
詰め襟の制服が懐かしい。中学生の頃は同じような詰め襟であったが、前に通っていた高校はブレザーであった。お洒落なのはブレザーだろうが、男らしいのは詰め襟だと俺は前から思っていた。詩織もセーラー服が気に入っているようであった。ちなみに彼女は中学時代もセーラー服であったのだが・・・・・・。
「お兄ちゃん、新しい高校では彼女作りなよ。カッコ悪いほうじゃないのに彼女いないから、男が好きなんじゃないかって詩織の友達の間で噂になっていたよ」詩織はニコリと笑って手を振りながら担任の後について自分の教室のほうに歩いて行った。
「ほっとけ!」たぶん俺の声は聞こえなかったであろう。
俺は自分の担任の後について自分のクラスに行く。生まれてこのかた転校なんてものは初めてであったので緊張がMAXまで上昇していく。
「それじゃあ俺が先に入るから名前を呼んだら入ってきて。いいね」教師の段取りらしい。なぜ廊下で待たないといけないのか理解出来なかったが転校の儀式であるなら仕方がない。
教師が言葉通り先に中に入り何やら話をしている。転校生がやって来た事を生徒達に発表しているようである。俺はよく漫画である黒板落としの仕掛けとかが無いか頭上を確認してみるが、そこ形跡は全くなかった。
「おい、山本君。入りなさい」呼ばれたのでドアを開けて中に入る。皆が俺の方を見るがどうやら男の転校生に男達はガックリしているようだ。女子は若干盛り上がっているように見えるのは俺の自惚れであろうか。
「それじゃあ、自分で自己紹介をして」
「はい、名前は山本直樹です。この度この学校に編入という形で通う事になりましたので宜しくお願いいたします」ちなみに、この高校は二年生から三年生に進学する際はクラス替えが無いそうである。つまり、進級のタイミングではあるが、クラスの中での団結感はすでに出来上がっているようで、俺が入る隙があるのかは若干の不安があった。
「どこから転校してきたんだ」休み時間になると、俺の不安をよそに男子生徒達が俺を取り囲むようにして質問をしてきた。
「なにかスポーツやっているのか?」「趣味は?」「彼女はいたのか?」そんなに興味がある物なのかと驚いた。俺は丁寧にその問いに答えていった。ふと教室の前の方に座る女子生徒に目が釘付けになる。
俺が見ている事に気が付いたのか彼女は目を逸らして床に彼女の視線を落とした。
「どうしたの、さっそく彼女が気になるのかい?」先ほど俺に質問してきた中にいた男が俺の視線に気が付いたのか突っ込みを入れてくる。
「もしかして、彼女は天野恵・・・・・さんか?」俺は久しぶりにその名前を口にしたような気がした。
「えっ、彼女の噂は他の学校まで知れ渡っているのかい?さすがだね!」なにがさすがなのかは解からなかった。
「あっ、いや、小学生の時の同級生なんだ・・・・・、途中で転校していったけれど」彼女を見つけて俺の心臓は飛び出すのではないかと思うほど脈打っていた。まさか彼女ともう一度出会えるなど夢にも思っていなかった。そう、彼女は俺がずっと好きだった女の子。小学生の淡い憧れではあったが、俺の気持ちが最高潮に達した時に、彼女は俺と同じように父親の仕事の都合で引っ越していったのだ。
「あの・・・・・・、天野恵さんだよね・・・・・・、俺の事を覚えているかい?」俺は意を決して、彼女に声をかけた。
「え、ええ、覚えているわ。それが・・・・・・、何か?」彼女は恥ずかしそうに下を向いたままであった。
「いいや、別に・・・・・・・、俺の事を覚えていてうれしいと思っただけだよ」そう言い残すと俺は自分の席に戻った。
幼き日の淡い恋心が沸々と蘇ってくる。そうその日、俺の初恋リベンジが始まったのであった。
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