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天野が走って行った後を追いかけていく。どうやら中庭に向かったようだ。中庭に到着するとベンチに座る彼女の姿があった。
「ご、ごめん」俺は息を整えながら先ほどの出来事を陳謝する。俺が何かをやった訳では無かったが彼女に不快な想いをさせたことには間違いなかった。
「ごめんて、何が……?」天野は下から見上げるような目で睨み付ける。俺が好きだと云うことがそんなに迷惑なのかと思った。
「いや、あんな皆の前で恥ずかしい想いをさせて申し訳ないと」彼女の視線を剃らすように目を横に背けた。
「一体、なんの冗談なの。私を馬鹿にしているの?」彼女の口調が痛い位に俺の心を突き刺す。
「馬鹿にって、そんな……、俺はずっと天野、君の事が好きだったんだ。それを言えないまま、天野は転校してしまって……」俺は今まで秘めていた想いを爆発はせるように彼女にぶつける。彼女はその言葉を聞いて少し呆けたような顔をした。
「ちょ、ちょっと……」
「話は聞かせてもらったわ」突然、彼女の物ではない別の女の子の声がする。そこには長髪の少女が腕組をして立っている。
「昌子!?」天野は驚いたような顔をして少女を見た。
「君は誰だ?」俺は彼女のことを知らない。
「私は篠原昌子。恵の親友よ」昌子と名乗る少女は高校生に不似合いなセクシーな体型、胸は大きく腰は括れて出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。顔も男子好みの美少女であった。
「なんなんだよ、お前は関係ないだろう」俺は第三者が入ってくる事に抵抗感を感じた。どうやらクラスの皆にも俺は変な奴というレッテルが貼られてしまったようだ。この昌子という少女も俺の事を変態とでも思っているのであろう。
「だって面白そうなんだもの」昌子はニコニコ笑っている。
「ちょっと昌子!」天野は昌子を窘める。
「いいじゃない。ねえ山本君。私が協力してあげる。今度の日曜日に一緒に遊びにいこうよ。こっちは昌子と私、そっちは……、適当に誰か一人連れてきてよ」昌子は腰に手をあててポーズをとったまま俺の顔を指差した。
「あ、ああ」なぜか彼女のその迫力に押されて返事をしてしまう。
「ちょ、ちょっと昌子!勝手にそんな!」天野は顔を真っ赤にしている。
「いいじゃない、私に任せなさい!」昌子は胸を右手で叩いた。
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