初恋の君…、俺のリベンジ物語

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「ただいま」学校が終わり家に帰る。 「お兄ちゃんお帰りなさい!」詩織が俺より一足先に帰宅していた。 「お前帰ってくるの早いな。クラブとか入らないのか?」詩織は中学時代はソフトボール部のピッチャー兼キャプテンであった。県内の大会ではそこそこの成績を残して勇退したそうであった。高校生になっても続けるものだと俺も両親も思っていたのだが、本人は中学校で燃え尽きてしまったそうだ。なんの取り柄も無い俺からすれば勿体無いという言葉しか出てこなかった。実際、ソフトボールの名門高校からも進学のお誘いがあったそうなのだが学生寮生活と高校もクラブ活動で終わってしまうことが苦痛に感じたそうだ。ちなみに俺はずっと帰宅部の身分を謳歌している。 「お兄ちゃん、縦笛持っていたでしょう。明日の授業で使うからあれ貸してよ。」彼女はなんだか俺の部屋にあるものを隅々まで知っているようであった。 「駄目だ!駄目!駄目!あれは俺の宝物なんだ!絶対に駄目だ!」俺の必要以上の抵抗に詩織は唖然としている。 「いい、わかった。ケチンボ!棚から三段目の端から三冊目の本の事をお母さんに言ってやるから!」言いながら彼女は自分の部屋に飛び込んで行った。引っ越しから数日しか経っていない筈であるのに、俺の秘蔵本の有りかを熟知しているとは、恐るべし詩織。いや、兄妹でも勝手にお兄ちゃんの部屋を荒らしたら駄目でしょう。  俺の部屋に入ると棚の一番上の段に縦笛が飾ってある。これは小学校の頃、転校する前の天野の笛と俺の笛を交換したものだ。俺は今もこの笛を大切にしている。詩織に貸すなどもっての他だ。  俺はおもむろにその縦笛を手に取ると、久しぶりに吹いてみた。  ドレミフソラシド~♪ドンッ!! 「うるさい!!」詩織が壁を蹴る音がする。笛を貸さなかった事がかなり気に触ったようである。しばらくソッとしておこう。  詩織の蹴りで棚の上に不安定に乗せていたアルバムが落下してきた。 「卒業アルバムか……」アルバムを手に取り眺める。ただ、その集合写真に天野恵の姿は無かった。彼女は父親の仕事の都合でこの写真を撮影する前、突然転校していった。あの時の失望感は今も忘れられない。  もっと色々話せば良かった。もっと優しくしてあげれば良かった。……そして、好きだと言えば良かった。その後悔にずっと苦しめられてきた。その苦しみからもう少しで解放されるのかも知れないのだ。次の休みの日彼女と……、神様も捨てたものではない。  ドレミフソラシド~♪  感謝の気持ちを込めて演奏。  ドン!! 「だから、うるさいって言ってるだろ!!」詩織の二発目の蹴りが炸裂した。
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