初恋の君…、俺のリベンジ物語

9/20
前へ
/20ページ
次へ
 赤いスーツを着た女性が武器を手にしながら上から見下ろす。獲物を探しているようだ。彼女は狙いを定めオーバーなアクションで昌子を指差しながら叫んだ。「そこのあなた!どこから来たんですか!?」 「武庫之荘です!」すかさず大きな声で昌子が答える。 「あら中途半端にお近くね!それに中途半端にブルジョア思考!ありがとうございます!」女性がそう叫ぶと場内が笑いに包まれた。その芸人さんのように回転する思考に感服する。 「やだ、面白い!!」隣で恵が口元に手を当てクスクスと笑っている。その可愛い仕草を見て俺は久しぶりに心臓がキュンとする。俺の視線の気が付いたのか彼女は咳払いをして真顔に戻った。  少しの説明が続いた後、スタッフの誘導により劇場の中に移動すると映画館のような座席が配置されていた。しばらくすると3Dの映像と役者さんの演技を絡めたアトラクションが始まった。手に汗を握る展開に興奮する。隣に座っている恵は面白いというよりは少し怖がっているようであった。その表情がまた可愛らしい。 「な、なに見てるのよ!」拗ねたように俺の反対側に顔を向けた。少し震えているようだ。 「ごめん」俺は最近謝ってばかりいるような気がする。しかし可愛いい。  生川はずっとイヤラシイ目で昌子を見ている。彼女はそういう視線には慣れているのか軽くいなしている感じであった。 「あー、面白かった!」昌子は大きく背伸びをしながら笑顔を見せた。 「そ、そうですね」生川はいつの間にか眼鏡をかけている。彼は近眼のようであった。 「君は、アトラクション全然見てなかったじゃない。なんか昼食にしようか」生川の下心はすべて見透かされているようであった。「ねえ、山本君は何が食べたい?」そう言うと昌子は俺の腕にその体を絡みつけてきた。彼女の柔らかい胸が当たり緊張する。 「ちょ、ちょっと昌子ちゃん!」その様子を見て恵はあわてて昌子の腕を引っ張り俺から引き離した。 「いいじゃん、別に減るものでもないし」いや、それは俺が言うべき言葉ではないでしょうか。  生川がその横で自分の右側が開いてるとアピールするように右肘を軽く上げたようだが、昌子は素無視したようだ。 「そうだな・・・・・・、パスタ系なんてどうだ?」俺は近くにあった看板を指差した。 「あっ、私スパゲティ大好き!」歓声を上げたのは恵みであった。恥ずかしかったのか顔を赤くしたまま彼女は咳払いをしながら表情を元に戻した。その様子を見て昌子が苦笑いしている。 「それじゃ、この店で食事しましょう」昌子がそう言うと一同はパスタ屋の看板の下をくぐった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加