生まれた夢

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生まれた夢

(1) 花火が打ち上がる。 それを別府インターから見ていた。 別府インターなら少ないだろう。 考えが甘かったようだ。 来るのが遅かったらきっと駐車するのもままならなかっただろう。 花火は当然小さかったけどくっきりと見えた。 花火が終わるとみんな出ていく。 「この後どうする?」 光太が聞いていた。 光太は当然だけど僕達も明日は月曜。 まだ残ってるテストがある。 あまり夜更かしは出来ない。 ファミレスでいいだろう。 ファミレスで話をしていた。 光太達はやはり工程通りに行かないらしい。 もちろん納期の遅れ=取引停止なので業者も必死になっている。 中にはそうでないのもいるけど。 部長などと親しい間柄にある企業はなかなか予定通りに作業を進めてくれないらしい。 請求書も見積もり当初とは違うと言って難癖をつけて単価を釣り上げてくる。 説得するのに大変なんだそうだ。 もちろん自分たちの業績の為でもあるが下請けの為でもある。 光太達が交渉してる段階で我慢しておけ。 上が出てきたら倒産するぞ? やんわりと忠告するがやはり18の若造だとなめてかかられる。 志水建設という看板を背負っているのは変わりないのに。 バレーもサッカーもテニスも順調のようだ。 山崎棗は夏休みに入ったらその時期にある大会に出ている。 前期の間も授業の時間を調整しながら大会に出ていた。 当然のように勝ち続ける。 やはりテレビに引っ張りだこのようだ。 スポーツメーカーはもちろん酒井コーポレーションやその他の企業のスポンサーもついてる。 もう上のランクに出場してもいいんじゃないかという実力を発揮していた。 僕達はテストに追われている。 と、いっても履修している科目のテストだけ受けたらいいのでそんなに毎日大変というわけでもない。 それでも学はバイトの時間を減らしてもらってテスト勉強をしている。 善明はそんなテストの合間をぬって海璃と婚姻届を提出した。 今後は酒井海璃になるわけだ。 これで結婚している組は2組になった。 次に結婚するのは誰だ?って話になる。 夕食を食べると解散して家に帰る。 風呂に入ってテレビを見ている。 「もう少しで夏休みなんだろ?」 「まあね」 大学生活初めての夏休みだ。 学はバイトが大変らしい。 美希の家の仕送りがあるからしなくてもいいと美希は言ったが、自分の食い扶持くらいはと学はバイトしてる。 僕は「水奈だけじゃなくて誠司達の勉強をみてやってくれないか?その分時給上げるから」と水奈の母さんから言われた。 多田家の人間は勉強が苦手らしい。 もちろん僕は受けた。 小学生の家庭教師なんて楽なものだ。 全員に共通して言えるのは得意科目が無い。 工作の宿題なんかは水奈の父さん任せなんだとか。 朝顔の育成も3日で枯らしてしまった。 慌てて朝顔の種を買って水奈の母さんが世話しているらしい。 他の皆もバイトをしたり旅に出たり色々するみたいだ。 今頃高校3年生は自働車免許の取得に頑張っているだろう。 このご時世自家用車に乗るだけならAT限定でもいいんだけど仕事に出る事を考えるとMT車に乗れるようになっておいた方がいい。 地元で免許なしで就職できた麗華が奇跡なのだから。 普通は事務でも免許を必要とする。 車を持っていなくても下請けなどに書類を届けたり銀行に行ったり雑務で使う。 しかし志水建設は立地条件が良い。 銀行等は近くにある。 雨が降ったら大変なくらいだ。 それに「どうして下請け如きの為にうちの事務が出向かなきゃいけないんだ。自分で取りに来い!」と強気の姿勢でいる。 渡辺班に所属する企業はみんな似たような物だ。 逆らう者は皆潰す。 基本的には変わらない。 まあ、人の心配をしている暇はない。 僕達も在学中に資格を取っておく必要がある。 前期が終ったら打ち上げしよう。 皆と話をしていた。 テレビが終る頃僕は眠りについた。 (2) 僕達は熊本に来ていた。 トレセンを受ける為に。 色々な技術指導を受ける。 基本的な動作を教えてもらうだけだった。 誠司の父さんとそんなに変わらない指導内容。 ボールを持ってない時の行動、ボールを受け取ってきたときの行動、ドリブルのテクニック、パスの技術。 そんなの今さらやる必要あるのか?と思うような訓練を受けている。 皆必死に話を聞いてやっている。 そんな皆のプレイを見ながらのんびりやっていると「もっと集中してやれ」と言われる。 しかし誠司の父さんに言われた事を何を今さら必死に繰り返す必要があるのか?と疑問には答えてくれなかった。 そんなの知っている。 もちろん手を抜いていたわけじゃない。 皆のプレイを見ていたのも癖を見抜くため、観察していた。 例えばこの人は必ず最初に右足でボールに触れるとか、ああ利き足は右足なんだなとか。 シュートの練習なんて今さらな気がした。 なんで熊本まで来てこんな練習をするんだろう。 するとそれまで黙ってみていた監督らしい人が初めて動いた。 「君、名前は?」 「片桐冬吾です」 「じゃあ、片桐君。ちょっとこっちおいで。キーパーはそのまま待機してて」 僕と監督はセンターサークル付近まで下がる。 ゴールまでは随分長い距離だ。 僕とキーパーの間には誰もいない。 監督は僕に聞いてきた。 「片桐君は右足でボールを蹴ったことはある?」 「ないです」 「だろうね」 監督は僕の左側にぴったりついた。 「この状態でゴールに向かってシュートしてごらん?」 当然左足は使えない。 暗に右足で蹴ってみろって事だろうか? あまり右足でボール蹴ったことないからコントロールには自信がないんだけどな。 「ゴールを狙うくらいの気持ちで思いっきり振りぬいてね」 監督に言われた通り思いっきり蹴飛ばした。 とりあえず枠内に収まればいい。 「インサイドで蹴ったらダメだコントロールは期待してないからつま先で思い切り蹴って」 枠内にも入れる必要がないのか? すると僕自身驚いた。 ボールは思いっきり上に蹴り上げてしまったと思った。 でも微妙なドライブ回転がかかり高さを抑えている。バーに当たるか当たらないかくらいの位置を保って飛んでいく。 キーパーがパンチングで弾こうとすると「触るな!」と注意する。 ボールはバーに当たった。 ボールは破裂しなかったけどゴールを微かに揺らす程度の威力を持っていた。 初めての経験だった。 それを見て監督は断言した。 「君の利き足は左足じゃない。右足だよ」 ただずっと左足でコントロールしていたから気づかなかっただけ。 もしキーパーが振れていたら怪我していたであろう。 だけど監督は言う。 「だけど、せめて高校生になって体が出来上がるまでは右足シュートは封印しておきなさい。幼い片桐君の体に負担がかかりすぎる」 ただ、右足が利き足じゃないのか?という疑問を試してみたかっただけ。 高校生になればきっと今よりも強力なシュートが打てるはず。 漫画じゃないけどボールを破裂させたりDFを吹き飛ばしたりする程度の威力が出せるかもしれない。 僕の今の技術に非常に強力なロングシュートが加われば国内ではトップクラスのフォワードになれる。 そういえばボールにタッチするのは左足だけどダッシュするときに最初に蹴り出すのは右足だった。 だからこそ左足でボールを運んでいたのだけど。 そんな些細な事に気が付くのがトレセンの指導者の実力というものなのか? 講習は3日間続いた。 その指導者がつきっきりで僕にアドバイスをしていた。 細かい修正をいくつか受ける。 そして最後の試合形式の練習でそのレベルアップを証明してみせた。 「君が代表入りする時を楽しみにしているよ」 最後にそう言われて講習会は終わった。 帰りに父さんにそのことを話す。 「そうか、右足に気づかれたか」 父さんも気づいていたらしい。 ただ監督が言うように今の未熟な体ではその反動についていけない。 だから今は黙っていようと思っていたそうだ。 「今は左足だけでいい。無理に右足をつかっちゃいけないよ」 「わかった!」 「それにしてももう代表入りの話が出るなんてすごいですね」 母さんが言う。 日本代表。 サムライブルーと呼ばれる選手達。 僕もそこに辿り着ける日がいつか来ると約束された。 最初はこんな練習に意味があるのか?と疑問に思ったトレセンは僕に新たな武器を与えてくれた。 (3) 「ただいま~」 光太の声がする。 酷く疲れてるようだ。 工期は守る、残業はしない。 凄くいい会社に聞こえるけど実際はものすごく厳しいノルマだ。 それがこなせないならいらない。 残業してでも終わらせろの方が余程気が楽だ。 昔は残業手当目当てにただ事務所に残っているという不届きな輩もいたそうだ。 今でも現場所長クラスになると暇だけど作業が終わるまで帰れないからとネットで遊んでる者もいるらしい。 私は内勤だから残業というのが一切無かった。 例え客が時間ぎりぎりに駆け込もうと一切受け付けない。 電話も留守番電話対応に切り替わる。 光太の作業も捗っていないようだ。 今の時間は20時過ぎ。 これでも早かった方だろう。 「とりあえずシャワーでも浴びてて。ご飯温めなおすから」 「ああ、悪い」 光太がシャワーを浴びてる間におかずと味噌汁を温めなおす。 シャワーから出た光太がご飯を頬張る。 「どうかな?」 「うん、日々上達してるよ。流石だな!」 お世辞なんだろうけど嬉しい。 「で、今日はどうだったの?」 「ああ、参ったよ一歩間違えたらクビが飛ぶところだ」 光太の首じゃない、所長の首だ。 「また内装業者?」 「いや、防水業者」 窓やキッチンなんかにコーキングをしたり屋根やベランダに防水加工をしたりする業者。 外壁に接着剤を流し込んで剥離しようとしているコンクリと鉄筋をくっつけたりトイレや浴室の床に防水処理も施す。 塗装業者に任せる場合もあるけど。 今回は学校のトイレの床の防水に問題があった。 設計会社は床にFRPと呼ばれる防水材を使うことにした。 滑り止めに骨材をまぜることにした。 FRPは船体などに使われるように滑らかな仕上がりを見せる。 何の問題もないように思った。 だけど施工業者に問題があった。 この時期は台風にそなえてやら同じように学校の補修などに駆り出されて忙しい。 業者がやってきたのは終業時刻前だった。 慌てて施工に入る。 夏場だから暑い。 FRPの塗料は固まるのが早い。 だから業者も慌ててやってしまった。 投光器を持ってきて何か所もあるトイレの床と壁を仕上げていく。 そして悲劇はここから起こった。 今日行くと折角新しく貼った床のシートに塗料がこぼれてあった。 当然普通の洗剤では落ちない。 そして落とすための溶剤を使うとシートの色が変色する。 それだけではすまなかった。 乾燥が早かったため綺麗に塗装できていなかった。 骨材を入れたのも災いした。 素足ではとても踏み入れないほど床が尖っていた。 骨材だけが原因じゃない。 FRPは塗料の下にガラス繊維のシートを敷く。 それが毛羽立ってしまった。 それは針の様に尖ってしまいとてもじゃないけど床として成り立たない。 そしてそれは小学校の校舎。 転んだら間違いなく擦りむいたじゃ済まない。 当然業者に問い詰めた。 「骨材なんていれるって言ったそちらの落ち度だ。やり直すなら追加工事になる!」 業者はそう言い張った。 しかし骨材を入れないとFRPの床は普通なら滑りやすくて危険だ。 そして一度グラインダーで尖っている部分を削って上から塗りなおすことにした。 今度はちゃんと丁寧にするように監督したらしい。 廊下の洗浄はメンテ業者が丁度入る時期だったのでメンテ業者に任せる事にした。 FRP防水は防水機能等は優れているが反面扱いが難しい。 それを素人同然の新人が施工したのだからそうなったんだけどそれを隠していた。 FRP防水の資格ができたのは他の防水に比べると最近の事なんだとか。 それでこの時間まで立ち会っていたらしい。 なんとか盆休みは取れるそうだ。 取れないなんて事態になっていたら所長は間違いなく僻地に異動されていたであろう。 「俺の花火ばかりでごめん。麗華はどうだ?」 「そうね。相変わらずかな?」 受付は会社の顔。 当然化粧くらいはする。 私みたいなのでも美人に見える。 光太は「すっぴんでも麗華は綺麗だ」と言ってくれるけど単に「化粧が下手」と言いたいのか?と意地悪を言ってしまう。 とりえあえず受付嬢やCAなどはそんなにひどいのはいない。 そういう風に見せるように訓練されているから。 制服も夏服になったとはいえ紺と白の清潔感ある制服になっている。 決して光太のような作業服ではない。 そうすると何を勘違いしているのか、偶に営業の人が声をかけてくる。 「今年入ったの?」とか「お昼休み何時から?」とか。 今でいうなら十分セクハラだ。 しかしお客様には変わりない。 どうしたものかと道香と相談していると、光太のお父さん支店長がやってくる。 「うちの受付がどうかされましたか?」 「い、いえ。ちょっとお喋りをしていただけです」 「我が社では今は業務時間。あなたのお喋りに付き合ってる時間じゃない」 光太のお父さんがそう言うと何も言わずに帰って行く。 「ああいう輩には強気で言っても良いよ。後始末はこっちでするから」 光太のお父さんはそう言っていた。 「そのくらいかな」 「受付も大変だよな。変なおっさん相手にしないといけないし」 「そうね。道香なんて下着の色まで探られてたし」 「セクハラ越えてただの変態だな」 光太はそう言っていた。 今年の盆休みは異常に短い。 有休をとっても5連休がやっとだろう。 もちろん私達はとらなかった。 3連休もあれば十分だと思ったから。 盆は皆と山にキャンプに行く予定だ。 皆それを楽しみにしていた。 (4) 山道を登っている。 目的地は酒井リゾートフォレスト。 今年も一泊二日の山のキャンプに行く。 受験生もいるけど偶の気晴らしにはいいだろう。 今年は空と水奈がいない。 2人は友達とキャンプに行くようだ。 天音ももう年頃だし友達と遊びに行くかと思ったけどそうでもなかったらしい。 大地も来るんだから当然なんだろうけど 「ただで肉食えるのに行かないはずがない!」 それが天音の一番の理由だった。 まずは遊園地で遊ぶ。 誠司と冬吾はもう適当に遊んでいる。 園から出なかったら自由にしていいと伝えてあった。 念の為カンナと愛莉がついてるけど。 茜と純也は大丈夫だろう。 昼食を挟んで遊園地で遊ぶとオートキャンプ場に移動する。 テントを設置して火を起こす準備をする。 愛莉達女性陣は野菜を切っていた。 茜は料理には全く興味を示さない。 冬莉が愛莉についてる。 「お父さんまだ昼間だよ!これはダメ!」 桐谷君が娘の恋に怒られていた。 まあ、桐谷君達に酒が入るとろくな事が無いのは事実だからしょうがない。 恋は変わったらしい。 桐谷君に対する恋なりの愛情が芽生えたんだそうだ。 その結果桐谷君は夜でも「お酒ばっかり飲んでないでご飯も食べなさい!」と愛娘に怒られてるわけだけど。 BBQの準備が出来上がると渡辺君の挨拶があって肉を焼き始める。 「天音、そんなにがっつかなくても肉いっぱいあるから」 「あるんだったら!あるだけ食う!そういうもんだろう」 大地は天音の扱いに相変わらず困っているようだ。 石原家と言えば思い出した。 酒井君に挨拶に行く。 「善明は入籍したんだってね。おめでとう」 「ありがとう」 「天音ちゃんもうちの大地に任せていいのよ」 そばで聞いていた恵美さんが言った。 「2人はそのつもりらしいから心配いらないよ」 「そうね、ただ大地はああいう性格だからちゃんとしっかりできるのか心配で仕方ないわ」 誰に似たのかしらと言ってる恵美さんの隣で石原君が苦笑いしてる。 石原君の隣には酒井君がいた。 「善明はどうやら僕に似たようだ……」 石原君が酒井君を慰めている。 石原君も大地がいるから他人事じゃないんだろう。 「俺は絶対に水奈は嫁に出さん!」 誠が叫んでる! 「お前がどう思おうと水奈がお前から逃げ出すよ」 「そ、そんなこというなよ神奈」 この2人も毎回飽きないな。 「そう言えば誠司はどうなんだ?この前のトレセン行ったんだろ?」 誠に聞いてみた。 「3年後が楽しみだって言ってくれたよ。冬吾ほどじゃないけどな」 後はケガさせないようにしっかり管理しとくのが俺の仕事だ。メンタル面もケアしないとなと誠は言う。 BBQが終ると花火をして遊んでいる子供たちと酒を楽しんでいる大人たちに別れた。 花火が終ると子供たちはテントに入って寝た。 僕達もそろそろ寝ようという時に突然花火の音が鳴る。 ここはオートキャンプ場。 当然僕達だけで貸し切ってるわけじゃない。 だけどもう深夜だ。 こんな時間に花火をするのはマナー違反だ。 文句を言いに行こうとするカンナと美嘉さんを宥める。 「学生時代の特権だ。大目にみてやろうじゃないか」 渡辺君が言う。 「私は自分の娘をあんなふうに躾けたおぼえはない」 美嘉さんが反論する。 美嘉さんの娘の紗理奈は天音と揃って全治6カ月の重傷を負わせたそうだけど。 やりすぎるなと言ってるのに天音達はキレたら止まらない。 「それは冬夜さんに似たんですよ」 愛莉は笑って言う。 でも僕達にもあんな時代があったんだとバカ騒ぎをしている多分大学生の集団を見て思った。 「少々五月蠅いかもしれんけど。まあ、歳には勝てない。いい加減に寝ようか」 渡辺君が言うと僕達はテントに入る。 花火と笑い声を聞きながらかつての自分を振り返りながら眠りについた。 (5) 朝早く目が覚めた。 テントを出ると石原君がコーヒーを飲んでいた。 もう僕達は定番のようだね。 「おはよう」 僕に気付いた石原君が挨拶をする。 僕も返事をして座ると自分の分のコーヒーを準備する。 2人で話をしていると大地達も起きてくる。 次々と起きて来てそして自然に朝食の準備が始まった。 最後まで寝ていたのは中島君と誠君と瑛大君だった。 これもいつもの事だ。 美嘉さんを主導に朝食が作られるとそれを食べて片づけに入る。 片づけを済ませると車を移動させる。 サファリパークに向かった。 サファリバスに乗って動物を見る。 大人が一度見て飽きる物でも子供達はそうでもないらしい。 サファリパーク内で昼食を食べると車は地元へ戻っていく。 「どうせだからファミレスで夕食食っていこう」 あんまりお腹空いてないんだけどね。 まあ、時間的にもそろそろか。 ファミレスに寄って夕食を食べると解散する。 家に帰って荷物を倉庫に片づけると家に入って風呂に入る。 明日は一日オフ。 休みだ。 働く事は許されない。 とりあえず今日は酒を飲んで寝る事にする。 「善君、ちょっと相談にのってくれない?」 「どうしたんだい?晶ちゃん」 「善明達の新婚旅行先で悩んでるの」 「そんなの2人が決めるんじゃないのかい?」 「結婚祝いにプレゼントしてあげようと思って」 入学祝が家だからね。 結婚祝いとなるとかなりの物が要求されるんだろうね。 「2人が長期休暇に入ったらクルージングでも用意してやったらどうだい?」 かなり適当に言ったつもりだった。 「それいいわね!ゆっくり過ごす時間は必要だわ」 そう言って晶ちゃんがスマホで検索を始める。 「地中海が良いかもしれないわね……」 ちょっとだけ晶ちゃんのスマホを覗いてみる。 ……学生の間の新婚旅行でよかったかもしれない。 下手すれば3か月かけての世界一周なんて言い出しかねないところだったよ。
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