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フクロウこそすべて
この世のすべてフクロウになったのは、いつからだったろうか。
ある日、意中の女性とデートしていた私は、一件目の盛りあがりを受けて、彼女を二件目に誘った。だがそこで彼女が発した言葉に、私は衝撃を隠せなかった。
「ごめんなさい、今日はウチにフクロウが来てるの」
私はフクロウに負けた。
翌朝、そんな哀しみを胸に出社すると、部下の新入社員が大遅刻してきたので、私はいつも以上に厳しく叱りつけてしまった。そこで遅刻の理由を問いただすと、部下は悪びれることもなくこう答えたのだった。
「家の前に傷ついたフクロウが倒れていたので」
こうして、この世のすべての「理由」がフクロウになった。今や「理由あり物件」といえば、かつてフクロウが自殺した物件のことだ。
そもそもこのような新入社員をなぜ入社させたのか。そう考えた私は人事部へと赴き、彼が我が社を受ける際に提出したエントリーシートを見せてもらった。その志望動機欄には、以下のように記載されていた。
《御社の仕事を通じ、全フクロウを幸せにしたいので》
我が社はれっきとしたIT企業であり、動物を扱う業務はない。だが人事課長に確認したところ、他の就活生もほぼ同じ動機を書いてきたとのことだった。食品、自動車、テレビ局など他業種の友人に訊いても、今どきはそれが常識だと鼻で笑われた。
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