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「お買い物ですか?」 「はい、新しい本が見たくて・・・。あとは足りない文房具もちょっと買い足したくて」 「もちろん、かまいませんよ。お供いたします」 「ありがとうございます!!明日、四限までなので、十七時にいつもの校門にお迎えに来て下さい」 「はい、わかりました。では、かなめさん。そろそろ冷えますからお部屋へ戻りましょう。お送りします」 「すみません、ありがとうございます」  ふわっと、かけられる浅葱さんのスーツの上着。浅葱さんの香水の匂いがして、包まれているような気がしてとても幸せな気持ちになる。 「いえ、かなめさんが風邪を引かれては大変ですから。では、俺はこれで」 「上着、ありがとうございます。あの、クリーニングしてお返しします」 「いいですよ、そのままで。でも、そうですねぇ・・・、しばらく預かっていただけませんか?」 「そ、れは・・・構いませんが・・・。むしろ、よろしいのですか?こちらで預かってしまえばその・・・」 「ええ、構いません。それでは、おやすみなさい、かなめさん」 「お、おやすみなさい、浅葱さん」 優しく頭を撫でられて、部屋から離れていく浅葱さんを見送って、姿が見えなくなったところでドアを閉める。顔は真っ赤になってると思うってくらい熱を持っている。ぺたりとドアの前で座り込み、頬を押さえる。 「~!!なんであんなっ!!さらっとしちゃうかなぁ!?」  浅葱さんは、私より八つも年上の男性。私のことはまだまだ子どもだと思っているのか、頭を時折撫でられる。彼は専属護衛、というだけでお手伝いさんではないから私や世那お姉様のことはさん付けで呼ぶ。かなとや秋人お兄様たちのことは君付け。かなとが一方的に浅葱さんに突っかかることは多いけれど、二人とも仲はそんなに悪くないと思う。秋人お兄様や次男の春人お兄様、三男の棗お兄様とはかなり親密。よく道場で訓練とかしているのを見かけるから。浅葱さんはカッコいい顔立ちをしているし、運動神経もいいし、頭もいい。ヴァンパイアかもしれない、とは思っているけれど、浅葱、なんていう家の財閥もそれなりに大きな家も分家もない。一般家庭でヴァンパイアが生まれないわけじゃないから、浅葱さんは訳があって隠しているのかもしれないと思い、ヴァンパイアなのかどうか聞けていない。  私も、浅葱さんに自分が異能持ちであることは知らせていないし、お互い様よね。それに、私の異能は特に異質だった。自分の血液が宝石になる、という異能。前に誘拐されたときに怪我をして流血した、そこから流れ落ちた血液が真っ赤な宝石に変わったのだ。それを見た誘拐犯たちはナイフで私の腕を傷つけて、傷の上に傷を重ねる羽目になり、今でもその傷跡は消えない。だから夏場でさえも私は長袖しか着られない。とても痛かった。押さえつけられて深く深く、血がたくさん出るまで切りつけられる。死んだら困るからってお腹とかじゃなくて腕を刺されたこともあった。
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