6人が本棚に入れています
本棚に追加
第四章 君にもう一度会いたい
彼女が学校をやめてから約一か月がたち、学年内でも彼女が転校したことをもう誰も話さなくなった。僕は一人いまだ彼女の行方をゆっくりと探しているがまだ手掛かり一つもなく仕方なく今は学校で勉強しているが、今日はやけに頭痛がひどく学校を早退し病院に向かった。
病院に向かうとなんとそこには瀬戸真白がいた。僕は彼女を見つけると彼女も僕に気づいて顔をそらした。僕は彼女の隣の席に座り
「瀬戸さんお久しぶりですね」
と前と変わらないように彼女に声をかけると
「お久しぶりですね長浜君」
瀬戸真白は浮かない表情をして僕と言葉を交わす。そして彼女は僕に
「今日はどうしてあなたみたいな健康な男の子がこんな病院にいるのかしら、そして今ならまだ学校の時間ですし」
彼女は厭味ったらしく僕に言うが僕は今日頭痛がひどくてねと今までと同じように話しをする。彼女は昔のようには余り話さないが
「そうだったんですね、あなたみたいな人はてっきり風邪をひかないと思っていました」
僕は誰でも風邪ぐらいは引くと思うんですけど、僕は彼女にツッコんだ。彼女は僕に
「バカは風邪を引かないんですよ、知っていましたか」
と真顔で言われ僕は少しひねくれたように
「それじゃ僕はバカではないんだよ、だって普通に風邪ひいてるし」
と彼女に話す。彼女はふーんと言ってそれじゃ私検査の時間だからさようならと言って僕の隣から立ち上がりスタスタと歩き始めると僕は知らぬ間に彼女の服の袖をつかんで引き留めてしまった。彼女は「いったい何の用なの」と言って僕に聞いてくる。僕は我に戻ると自分でなぜ彼女の服の袖をつかんだのかは全くわからないが、もしもここで彼女と離れてしまうともうまた会えなくなるのではないかと思い心の中にあった薄暗い雲を晴らすために僕はついに言った。
「瀬戸さん、今度一緒にお話しをしませんか。あなたがいなくなってから毎日が暇で暇でしょうがないんです」
僕はきっといやよと言われてしまうんではないかと思いながら彼女の返事を待った。
彼女は少し間を空けて
「いやよ、あなたには前にも言ったと思うけど私にはもう時間がないの、ごめんなさい」
彼女はそう言って僕が握っていた袖を振り払って診察室へと向かって歩いて行った。
それから僕は元々座っていた場所に腰を下ろし自分の番が来るまで目を閉じて待っていると軽く肩をトントンと二回たたかれ目を覚ますと三十代ほどの女性の看護師さんが僕を診察室へと案内してくれた。僕はそこで今日の体の状態など話し、病院の先生はただの風邪かもしれないが、ずっと熱が上がったままならインフルエンザの検査もするから二日経っても熱が引かないならもう一回病院に来て検査をしますよと言って、今日は風邪薬を処方してもらい家に帰った。
翌日僕は熱を測ると平熱に戻っており僕はいつも通りの朝のルーティンを行い学校へと行く準備を行った。その時朝からピーンポーンと家のインターフォンが鳴り僕は学校に行く前に一体誰なんだよと思いながら家の玄関の扉を開けてそこに立っていた人と話すために僕は扉を開けて
「何の用ですか」
と言いながらそこに立っていた人を見るとなんとそこには昨日会ったばかりの瀬戸真白がいた。僕は彼女に驚いて声が出ずにいると
「どうしたの長浜君、せっかく朝からあなたの体調を心配してきてあげたのに。でももう心配いらないようね」
彼女は僕にそう言ってまたいつか合えたらいいわねと言って僕の家からどこかへ向かおうとしたので僕は
「少し家に上がって話しませんか?」
と言って彼女の足を止めようとすると
「今日は学校でしょ、ちゃんと学校には行きなさい。それにもう体調はいいんだし」
彼女はそう言って止めていた足をまた動かし始め僕はまだ家を出る準備を終わらせていなかったので、急いで家を出る準備を終わらせて家を出て走ると、少し遠くの所に瀬戸真白が横断歩道で信号待ちをしていたので僕はすぐに走って向かい
「ちょっと待ってよ」
と息を切らせながら声をかけると
「わざわざ走って追いかけてきたんですか、それも今から学校があるのに。本当に貴方は私のことが好きなんですね」
彼女はあの頃のように僕に冗談を言って笑う。僕も冗談を言って笑っている彼女を見て笑いながら少し泣きそうになる自分を押し込んで
「今から一緒に出掛けませんか?」
僕はダメもとで頼んでみると
「仕方ないですね、今週の土曜日でよければ一緒に出掛けてもいいですよ」
彼女は僕の前に立ってニコッと笑いながら言った。僕は彼女に今日がいいなと少し曜日を今日に変えると言ってみると彼女は僕に、ダメですちゃんと学校には行かないと。もしも休んだりしたらお出かけはやめますからね、彼女はそう言って僕はわかったよと言うと
「本当に貴方は周りの人とは違うんですね、私に遠慮なく堂々といろんなお願いをしてくるんですから」
彼女はそう言って
「それじゃ土曜日私があなたの家に迎えに行くので朝九時までには起きておいてくださいね」
そう言って彼女は繁華街の方へと僕とは真反対の方へと歩いて行った。
僕は仕方なくいつも通り学校へ歩いて向かっていると友達の拓海に出会った。拓海は僕に気づかずに歩いているので僕は拓海の後ろへと走って向かい拓海の後ろまで行った。拓海はまだ僕に気づかずにいるので僕は拓海の方をトントンと二回軽くたたき
「そこの君待ちなさい」
僕は声を低くして声をかけると
「なんだよ、朝からお前は本当に元気だな」
と言いながら後ろを振り向き僕におはようと言った。僕も拓海におはようと言って一緒に学校へと残り七〇〇メートルの道を一緒に歩いて学校に行った。
学校に着くと校内はやはり賑わっていた。誰もが朝から友人と話しをしたり、朝練終わりの生徒たちがはぁはぁと息を切らせながら同じ部員と話しをしていたりでとても毎日と変わりもしない風景や音たちが見えてり聞こえたりする。僕もその一部と化して友達と話したりして何も変わらない日常へと溶け込んでいった。
でも時が経つとやはり学校だから静けさはやって来る。それは一番初めにやって来るのは朝のHRの時間だ。担任の先生が教室に入ってきていつものように号令がかかり出席をとると、後は今日の一日に諸事連絡がありそれが終わると後は一時間目の授業が始まるまでまたいつものように友達と話しをして時間を潰す。僕たちは同じ時間同じように毎日考えずに動きようやく土曜日へと時は動いた。
土曜日それは学生であれば誰もが喜ぶ曜日、僕はこの日久しぶりに異性の友達と一緒に出掛ける用事があった。だから僕は朝普段よりも二時間ほど早く目覚め、いつでも朝から彼女が家に来ても大丈夫なように準備も早く終わらせて、僕は刻々と過ぎる時を過ごした。
午前九時三十分ちょうどに家のインターフォンが鳴った。僕はすぐに玄関へ向かい扉を開けるとそこにはお洒落をした瀬戸真白がいた。僕は一瞬彼女の姿に見とれてしまったがすぐに我に返り
「どうぞおあがりください」
僕は彼女のスリッパを準備しそのままリビングへと向かった。
僕と彼女はリビングのテーブルの椅子に座り彼女は話し始めた。
「今日はどこに行こうとしているんですか、長浜君」
僕は前みたいに水族館に行きたいなと思い僕は彼女に言うと、彼女は帰り遅くなりますよと言った。僕はそれでもかまわないと話すと
「それじゃ今から一緒に水族館に向かいましょう」
と言って僕と彼女はこうして約一か月ぶりに二人で水族館へと向かった。
水族館に僕と瀬戸真白が着いた時にはもう十一時になろうとしていた。僕たちは十一時になったとしても気にすることなく、閉館時間ギリギリまで楽しもうと言い二人で入場券を購入し、館内をゆっくりと回り始めた。最初少し緊張しながら彼女と話しをしていたが、今では緊張することなくドキドキと早く脈を打っていた心臓も落ち着き僕は彼女に
「こうやって二人でここの水族館を見て回るのは久しぶりですね」
と言うと彼女はそうだねと言いながら水槽の中にいる魚たちをじっと見つめながら
「魚たちは、かわいそうだと思わないかしら長浜君」
僕は彼女にどうしてなのと聞くと
「だってずっと水槽の中に閉じ込められて、行きたい場所にも行けずにずっと弱り死ぬまでこの水槽と言うかごの中に閉じ込められて、人間と言う生物に見世物にされるんだよ」
彼女は無表情で水槽の中にいる魚を見ながら話す。僕はそんな彼女に
「でも海にいるよりは長く生きられるんだよ、エサももらえて食べられて死ぬこともないし」
僕は彼女にポジティブな言葉にリフレーミングして話すと、彼女はそうだねと言い隣の水槽を見ながらまた黙り込んでしまった。
そんなことが続きながらもようやく半分を見終えた頃にはすでに十三時になっていた。僕は彼女に一休みしないかいと聞くと彼女はそうしましょうと言って、館内で今いる場所から一番近い場所のカフェショップに向かいそこで一休みすることにした。
カフェショップに着くとそこで僕と彼女はホットドッグやパン、そしてコーヒーやミルクティーを頼みカフェショップからは海が一望できる場所だったので一番いい席を探し座った。
彼女と僕は席に座るととりあえず話すことなくスマホをさわり、時がしばらく経つと僕から彼女へ声をかけた。
「今日は久しぶりに遠くまで来たけれどやはり出かけるのは楽しいね」
僕は彼女に問いかけると
「えぇそうね、たまにはお出かけするのは気分的にも楽しめるし必要なことね」
彼女そう言って先ほど注文して購入したパンを一口かじりながら話した。僕も自分が買ったパンを食べながら
「瀬戸さん、今日は本当に無理を言って水族館まで来たけれど体調は大丈夫?」
と聞くと彼女は少し軽くため息をついて
「えぇ体調は大丈夫よ。それにここへはもう一度来たかったから気にしなくていいわよ」
彼女はそう言ってパンを食べながら遠くの澄み切った青い海を見ながら話した。僕は彼女にそれならよかったと言って彼女が見ている同じ景色を見ながら軽く昼食を食べ終えた。
僕たちはまた食べ終わりしばらく休憩を終わらせるとまだ全て見終わってはいなかったので先ほどの続きを見て回ることにした。彼女は先ほど休んだからか来た時よりも少し明るくなったように見えて、僕は何だか安心した。
それから僕と彼女は続きの館内をゆっくりと見て回りあっという間に時は過ぎて閉館の一時間前になった。僕たちは最後にお土産ショップで、記念としておそろいの魚のキーホルダーを買い笑いながら
「ここに二人で来たことは二人だけの秘密ね」
と言って水族館を後にした。
水族館から僕と彼女が帰る電車の車内の中で隣に座っていた彼女が急に僕の右手を握りながら小さく耳元で
「このまま行けるところまで一緒に出掛けませんか、長浜君」
と言って僕に話してきた。僕は彼女になぜかと理由は聞かずに
「わかった、今日は僕のお願いを聞いてくれたから瀬戸さんの行きたい場所までついて行くよ」
と言い僕は今乗っている電車の終点駅まで行き、何度も電車を乗り継いで最終的には津間市まで来てしまった。僕は今日の夜どこに泊まるかなど全くのノープランで来たので、瀬戸さんに僕は聞いた。
「瀬戸さん、今日寝るところどうします?」
彼女は僕の質問に
「適当な場所を探してそこに泊まりましょう、これも気まぐれ旅行みたいで楽しいじゃない」
彼女はのんきに話すが、電車から降り駅を出てから早三十分が経とうとしている。僕はとりあえずスマホで近くの宿と検索し、スマホのGPSから近い順に片っ端から電話をするがどこも満室だと言われ断られた。僕は仕方なく彼女に
「どこも二部屋ないみたいだしどうする、今ならまだ家に帰れるよ」
と言うと彼女は絶対にヤダと言い彼女は僕にスマホを貸してと言ったので僕はスマホを貸すと、彼女は僕のスマホを使ってどこかへと連絡をし始めた。僕は家に電話でもしているのかなと思いながらも電話をしている彼女を見ながらぼーっとしていると
「宿決まったわよ」
と言い彼女は僕にスマホを返した。僕はやっと寝れる場所が決まり安心すると彼女は僕に捕捉で
「今日はずっと一緒だね」
と言ってなぜか笑った。僕はなぜそんなにも楽し気に笑っているのかなと思いながらもチェックインまで時間があると言うことなので、少し早めの晩御飯を食べるためにスマホで近くのご飯を食べれるお店を探し、瀬戸さんと僕でここはどうかなぁと沢山話し合い最終的には瀬戸真白が食べたに行きたいと言った、海鮮料理になった。
僕と彼女がお店に着いた時には空はすでに真っ暗闇に染まり、お店の中に入ると沢山の人で賑わっていた。僕と彼女はお店の店員さんに案内された席に座りじっくりとメニュー表を見て注文し、沢山の食べ物を食べ終えてスマホの時刻を見るとなんと七時近くになっていた。彼女は僕にそろそろホテルに向かわないと間に合わなくなるわよと僕に言い、僕は間に合わなくなるのは困るねと言い、彼女が僕のスマホで連絡した津間グランドホテルへと向かった。
ホテルに僕と彼女が着いたのが十九時三十四分。僕と彼女は急いでホテルのエントランスに入ると、彼女は僕に
「私一人でチェックインしてくるから待ってて」
と言い彼女は受付の方へと歩いて行った。僕は彼女のテックインが終わるまで、ロビーに設置してあるソファーに座りしばらく荒れていた息を整えると、僕はスマホを取り出し親にメッセージで
『今日は友だちの所に泊まって来るから明日帰ります』
と送って彼女が二人分のチェックインを終わらせて帰って来た。僕は彼女の手に握っている鍵が一つしかないことに気づき
「なんで今瀬戸さんは鍵を一つしか持っていないの?」
僕は彼女に聞くと、彼女は一緒の部屋だからに決まっているでしょと言い僕は驚いた。でも彼女は僕に
「一緒は嫌かな?」
と言ってきたので僕は嫌ではないよと言いひとまずは部屋に向かうことにした。
僕と彼女が一晩過ごす部屋は九階にあり、眺めはそこそこだがかなりの部屋の広さだった。僕は部屋に入るとすぐに
「今日は僕ソファーで寝るから」
と言って彼女に一つしかないベッドを譲ると
「だめだよ、一緒に寝ないと」
彼女はそう言って僕を見る。僕は彼女に同い年の男女が一緒のベッドで寝るのはどうかと思うよと言うと
「大丈夫だよ、君は何もしないでしょ」
と笑顔で答える。僕は「ふぁー」と大きなため息をつき
「一緒に寝てどうなっても知らないからね」
と言い仕方なく彼女の隣で寝ることになった。
そのほかに困ることは一切なく僕と彼女は寝る時間までしばらく時が開いた。お互いお風呂にも入り終えて、やることが無くなった僕らは昔のように静かな部屋で話しをする。
「今日は私の無理に突き合わせてしまってごめんなさいね」
「別にいいよ、今日はわざわざ水族館に一緒に行ってもらったし」
僕たちはお互い浴衣姿でソファーに座って、あの時の屋上で話しをするように話す。
それは懐かしいようで新しい記憶のページをめくりながらも、今新しい記憶を作りつつ話す。そして話は彼女が学校を退学したときからの僕の生活や彼女の生活、そして彼女の病気のことも話しをした。
それから彼女は僕に言った。
「私と一緒に死なないかしら?」
僕は一緒に生きようよと言うが、彼女はもうそんなにも長くは生きられないと言い彼女の顔から涙の雫がポツポツと彼女の手に落ち、僕は彼女の手をそっと包み込むように握り
「もしも君がこの世から勝手に消えるようならば、僕もその時は後を追うよ。だからもう少しだけ一緒に生きよう」
と言うと彼女は泣きながら僕に
「わかった、でも私の寿命が尽きたときには後を追わないで欲しい」
彼女はそう言いながら僕の手を握り返した。
それから僕と彼女はベッドに横になると、手を繋いだまま寝ることにし、僕が目を覚ますとすでに朝の七時頃になっていた。僕は隣で寝ている彼女を見て思わず
「かわいいな」
と言葉に出してしまった。幸い彼女は目を覚ましておらず僕はほっと胸をなでおろすが、彼女は目を急に覚まして
「急にそんなこと言うのは反則だよ」
と顔を赤くしながら言った。僕は彼女が起きていたことに驚き、今先ほど言った言葉が恥ずかしくつい自分までも顔を赤くしてしまいながらも、朝の身支度を済ませることにした。
それから僕と彼女はホテルを遅めの九時にチェックアウトし、そのまま駅に向かい家に
帰ることにした。
家に帰る電車の中で僕は瀬戸さんに
「また一緒に出掛けられるといいね」
と言うと彼女は僕にそうだねと言い二人で電車の車内で、この二日間の短い休みの思い出を振り返りながら、家に向かって僕たちは帰って行った。
僕と彼女は途中の乗り換える駅で別れ僕が家に帰ったのは昼近くになっていた。僕は家に戻ると、そこには母が僕の帰りを待っていた。
「お帰りなさい、私の愛しのゆうまたん」
僕は母にただいまと言うと母は僕に
「どうせ真白ちゃんと一緒に昨日から出かけてたんでしょ」
と言ったので僕はさぁーねと言っておくと母は僕に余計なことを言ってきた。
「あまり女の子の扱いには鈍いあんたが一晩を同級生の女の子とあんたが一緒に過ごすなんて、とても立派に成長したな」
母の話しを聞くのすら嫌になり僕はさっさと自分の部屋へと向かうことにした。
それから僕は明日の学校の準備と宿題をせっせと終わらせ今日は早めに休むことにした。
最初のコメントを投稿しよう!