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第七章 弱い心と恋心
公園での出来事以来あれから毎日僕と瀬戸真白は朝と午後一緒に外を歩く。朝は途中から一緒に高校まで歩き、午後は僕が家に帰るときに一緒に学校から家まで、時にはお出かけをするなど高校生らしい過ごし方をしていたが、二月に入り急に瀬戸さんの体調が悪くなった。彼女は今総合病院にて入院している。僕は今日も彼女のお見舞いに行く。
学校が終わり僕は病院へと急ぐ。面会時間の関係で、少しでも二人で話がしたいと思い学校が終わると走って病院へと行く。そして今疲れ切った体で病室の扉の前に立ち、大きく深呼吸をして乱れていた息を整える。僕は深呼吸を五回ほど繰り返し、コンコンと二回ノックした。すると病室から
「そおぞー」
と返事が返って来たので僕は扉を開けて入る。すると彼女はノートを閉じて
「今日もお疲れ様、長浜君」
「別に疲れてないから言わなくてもいいよ」
僕は瀬戸さんに言うと
「君は毎日走って来てるでしょ病院まで、だからそのお疲れさまだよ!」
僕はよく知ってるなーと思いながらくだらない話しをする。僕たちはいつもそうだ、二人でいる時は特に大した話をするのではなく、
今日の外はいつもよりも寒かったよとか勉強が難しくてねと言いながら二人で勉強をするなど、学校にいるときっと恋人と勘違いされるような感じになった。
でもたまに看護師さんに恋人なのと勘違いされ決まって二人で
「違いますよ、ただの友達です」
と答えると看護師さんは笑いながら
「仲がいいので二人は」
そう言いながら病室を出ていく。僕は自分の中でもう振られたんだと何度も思いながら毎日欠かさず病院に平日学校帰りにお見舞いに行き、二月最後の週土曜日、僕は昼から今日も瀬戸さんのお見舞いに行くと病室の前に一人の女性が立って泣いていた。僕はその女性に声をかけた。
「おはようございます、どうかされたんですか?」
僕が声をかけた女性は僕を見るなり
「君は真白のお友達の悠真君かしら」
「ハイ、そうですけどどうなされましたか?」
僕は女性に聴き返した。すると女性は少しだけ時間をくださいと言って僕は了承し、女性はついて来てくださいと言って僕はその後ろをついて行った。
たどり着いた先は待合室の場所で僕は今日、いったい何の用なんですかと訊くと
「初めまして、私は瀬戸真白の母、瀬戸直美と言います」
僕は瀬戸さんのお母さんかと知ると
「初めまして、僕は長浜悠真と言います。いつも瀬戸真白さんとは仲良くさせていただいています」
僕は軽く自己紹介をすると、瀬戸さんのお母さんから
「少し真白について大切な話があるのだけれど話してもいいかしら」
僕は大丈夫ですと言い瀬戸さんのお母さんは少し間を空けて
「真白昨日の夜遅くに意識が無くなって、一時的に危ない状態が続いたの。それでお医者さんはそろそろ危ないと言っていて私はあの子に何もさせてあげられなかった。でも悠真君がいつもお見舞いに来ていることを話しているあの子、本当に楽しそうにしていたから私に何かできることはと思うと悠真君に二つだけお願いを頼むことかなと思ってね、だからもしよかったらお願い聴いてもらえないかな」
僕は残り少ない彼女のために
「わかりました、できるだけなんでもします」
と答えると瀬戸さんのお母さんはありがとう、ありがとうと言って涙をこらえていた。僕はそれでお願いとは何ですかと訊くと
「まずはできるだけそばにいてあげて、あの子は私よりも君と一緒にいたほうが楽しいはずだから。そして二つ目は真白の言うことを聴いてあげて欲しいな」
僕は分かりました、できるだけそばにいて、彼女の言うこともできる範囲で聴きます。僕がそう話すと最後にこれをと言われ、面会カードを渡された。僕はこれいいんですかと訊くといいのよと言って、家族面会カードを貰いいつもよりも早く来られて長く入れる最高のカードだった。僕はありがとうございますとお礼をすると、瀬戸さんのお母さんは
「私一旦帰るので、私が来たことは無い所でお願いね」
と言われ僕は分かりましたと言ってとりあえず彼女の病室へ向かった。
僕が病室に向かい扉をトントンと二回ノックしすると昨日より弱い声で
「はーい」
と聞こえた。僕は扉を開けて中に入ると瀬戸さんは泣いていた。僕は椅子に座り
「大丈夫なの?」
と訊くと
「大丈夫じゃない」
と答え、僕は瀬戸さんに
「何か心配事とか悩みがあるなら言ってよ、少しは楽になるかもよ」
そう言うと瀬戸さんはそうだねと言って僕に話し始めた。
「私本当はまだ生きたい、まだ高校生で楽しい思い出を作りたかった。そして死ぬのが本当に怖い。死んだら何が待っているか本当に怖いよ。それも一人で死にたくない。だからさぁ、私のお願い一つだけ聴いて、私本当は長浜君のこと好きなんだよね、でも私はもう死んでしまう。だからさ、私と一緒に最後に愛した者同士で心中しない?」
瀬戸さんはクスクスっと鼻をすすりながら僕に言った。僕は目を閉じて、何も話さないままゆっくりと目を開け
「わかった、一緒に心中しよう。誰もいない場所へ行って二人で一緒に死のう」
僕は瀬戸さんのためなら一緒に死んでもいいと思い言うと
「本当に心中てくれるの」
僕はうんとうなずき彼女の顔を見る。すると彼女は僕に
「明後日の朝私一旦仮退院するからその時に心中しよう」
僕は分かった明後日の退院の日ねと言うと
「それじゃちゃんと準備しておいてね」
なぜか彼女は嬉しそうに笑う。僕はこの笑顔を守ってあげたいと思い明後日の日が来るのを今か今かと待った。
それから日はあっという間に過ぎ約束の日になった。僕は駅に行くとそこには綺麗な女の子がいた、僕はきっと瀬戸さんだろうと思い
「おはよう、瀬戸さん」
と声をかけると
「おはようございます、長浜君」
こうして僕と彼女は駅で出会い今から新幹線で大阪まで向かい、一旦大阪でたこ焼きなど大阪ならではの物を食べて大阪から在来線である観光スポットの海の崖っぷちの場所まで来た。もうその時にはすでに空は夕焼け色に染まっていた。
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