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* *
「……ほんと最低だ」
どこか他人事のように呟いて、俺は苦笑混じりに吐息を漏らす。
それからおもむろにヘッドボードへと手を伸ばし、
「――あれ?」
けれども、いつもそこにあるはずの物が指に触れないことに瞬いた。
頭をもたげて確認すると、寝る前に置いていたはずの煙草がなくなっていた。ベッドの下にでも落ちたのかと一応探してみたけれど、どこにもそれらしいものはない。
「……静か」
きっとそうだ。静が箱ごと持って行ったのだ。
思い至ると、俺は再びベッドの上へと転がった。
「言ってくれたら新しいのあげたのに……」
そういうところが、彼らしいと言えば彼らしいけど。
見慣れた天井を見上げながら、込み上げた笑いに小さく肩を揺らす。
「は――…。……もう一眠りしようかな」
一頻り浸った後、俺は深く長い息をつき、確かめるように遮光カーテンに覆われた窓に目を遣った。
天候のせいもあるのだろうが、隙間から差し込む光にほとんど明るさはない。いつも通りの起床時刻からしてもまだ早い時間だった。加えて今日は日曜日だし、俺は一日予定もない。
頭では色々考えても、身体の方はただただ心地よい気怠さに包まれている。そっと目を閉じてみれば、まもなく眠気が降りてくる始末だ。
(……昨夜の静、可愛かったな)
夢現の中、不意に浮かんだのは俺しか知らない彼の姿態。
俺は笑みを滲ませながら、改めて噛み締めた。
(にしても……まさか静もバイだったなんてね……)
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