11.変わったのは

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 *  * 「……ほんと最低だ」  どこか他人事のように呟いて、俺は苦笑混じりに吐息を漏らす。  それからおもむろにヘッドボードへと手を伸ばし、 「――あれ?」  けれども、いつもそこにあるはずの物が指に触れないことに瞬いた。  頭をもたげて確認すると、寝る前に置いていたはずの煙草がなくなっていた。ベッドの下にでも落ちたのかと一応探してみたけれど、どこにもそれらしいものはない。 「……(せい)か」  きっとそうだ。静が箱ごと持って行ったのだ。  思い至ると、俺は再びベッドの上へと転がった。 「言ってくれたら新しいのあげたのに……」  そういうところが、彼らしいと言えば彼らしいけど。  見慣れた天井を見上げながら、込み上げた笑いに小さく肩を揺らす。 「は――…。……もう一眠りしようかな」  一頻り浸った後、俺は深く長い息をつき、確かめるように遮光カーテンに覆われた窓に目を遣った。  天候のせいもあるのだろうが、隙間から差し込む光にほとんど明るさはない。いつも通りの起床時刻からしてもまだ早い時間だった。加えて今日は日曜日だし、俺は一日予定もない。  頭では色々考えても、身体の方はただただ心地よい気怠さに包まれている。そっと目を閉じてみれば、まもなく眠気が降りてくる始末だ。 (……昨夜(きのう)の静、可愛かったな)  夢現の中、不意に浮かんだのは俺しか知らない彼の姿態(すがた)。  俺は笑みを滲ませながら、改めて噛み締めた。 (にしても……まさか静もバイだったなんてね……)
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