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腕にかけるようにして抱え上げた両足を左右に開かせ、軽く膝裏を押さえつける。
そうして暴かれた中心が俺の眼前に晒されると、静は顔の上で交差させていた腕を、より強く目元に押し当てた。
(……やっぱり見せてくれないんだ)
夢の中では、電気が点いていた。煌々と彼の姿態を照らし出していた。
けれども、今夜は最初から部屋に明かりは灯っていない。自分のロッカーから煙草を取り出すだけなら、窓から差し込む月明かりだけで十分だったからだろう。それもあって、余計に静の表情が分からない。
だけどそれでいいと今は思える。
だって目の前にいる彼は、夢の中の彼とは違うんだから。
戸惑いつつも、自ら応えてくれた彼はここにはいない。
既視感のように思い起こされたのはあくまでも夢で、これは夢じゃないのだ。
そのくせ、この時間がいつ終わるとも知れないのは同じだから気が焦る。
テーブルの上に灰皿はないけれど、代わりに外には人がいる。彼らにこんなところを見られるわけにはいかない。――こんな静の姿を見せるわけにはいかない。
俺は自分の指先を口に含み、唾液を絡ませた。
「静……少し力抜いて」
十分に濡らしたその手を、急くように彼の下腹部へと這わせる。艶かしく鼠径部をなぞるのに、彼自身はろくに兆してもいなかった。
だからと言って、それをすぐに煽り立てるようなことはしない。そのまま脇を通り過ぎ、会陰を辿り――間もなく探り当てた窪みを撫でつけると、その身がひときわ強張ったのが分かった。
「ここって……俺が初めてだよね……?」
「……っ」
静はとっさに唇を引き結び、肯定も否定もしなかったけれど、
「……ぃ、――っ!」
胎内へと指を沈めれば、対応しきれないその反応に答えを確信する。
「待っ……や、やっぱり……」
「ごめんね」
顔を隠したまま、狼狽えるように静が漏らした声を、当然のように俺は聞かない。
それどころか、その隙を突くように、まだ狭い中へと指を増やして、強引に隘路を開いていく。
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