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「そんな驚きます?」
「あぁ……いや、ごめん。何か……」
驚くよ……。
だって正直、君の高校の時の相手は普通に女の子だと思っていたし、なによりあのどこか胡散臭……裏のありそうなあの男と、静が、なんて……。
悪いけど、全く分かる気がしない。
(それに……そもそも祐ちゃんは……)
あれは相当な女好きでしょ……?
…………って、俺が言うのもなんだけどさ。
でも、実際彼には今もあんな可愛らしい彼女がいて、大学入ってすぐからだって、別の女の子と付き合っていたって言うし?
そんな相手が、実は静の高校の先輩で――かつ、静の元恋人?
(……どうなのかな、それは)
別に今更、あの男の性的指向が何かなんて問う気にはならない。
だけど、それを置いても静の単なる思い出話の一つとして、手放しで認めてあげられないのは何故だろう。
静から聞いていた別れの原因――相手が大学に入ってからの、〝遠距離による自然消滅〟――が、たちまち白々しく思えて来たからだろうか。
静の中での〝彼〟は、いまだに優しく誠実な人なのかもしれない。
けれども、ほぼ一度きりとは言え、俺が目にした〝彼〟の印象はそこまで良くはなかった。
(きっと次ができたからふったんだろ……自然消滅を装って)
半ば直感ではあるけれど、あながち間違ってもいない気がする。
思わず閉口してしまった俺を余所に、静は淡々と続けた。
「再会したのは、俺が前のバイト先に勤めてた時で……あぁ、ほら、俺があの……同じスタッフの女の子に告白されたって日、覚えてます……?」
「ああ……確か、二年前のクリスマス……?」
「そうです。その日に、偶然再会して」
「その日に?」
「はい」
静はあっさり頷いた。
俺は静の顔をまっすぐ見返したまま、再び言葉に詰まった。
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