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「で、見城さんはどうします? 俺は今日バイトないんで、これからサークル……」
「あぁ、俺も行くよ。君が行くのに、サークルに誘った俺がさぼるわけにいかないでしょ」
これと言った予定が入っているわけでもないし。
当然とばかりに肩を竦めて見せると、
「誘ったって言っても、全く覚えられていませんでしたけどね」
「あぁ……それいつまで言われるのかな」
「さぁ。俺が飽きるまででしょうか」
なんて、意外と辛辣な返しをされてしまう。
「……まぁほんと、手当たり次第でしたもんね」
「そう言われると、語弊がある気がするんだけど……」
確かに、新入部員を勧誘した時は俺もたくさん声をかけた。そして実際、俺は彼のことをよく覚えていなかった。
だけどね……。だからって、本当に誰彼構わずってわけじゃなかったと思うんだよ。……いや、言い訳じゃなく。
「でも、今日は通しとかないですよ」
「静は大道具の整理だろ? やることなければ手伝うよ」
取り繕うように笑顔を向ければ、彼は一瞬戸惑いつつも、「どうも」と小さく頭を下げた。ちょっとだけ面倒くさそうに、「怪我だけはしないでくださいよ」と付け加えたのは、多分彼なりの照れ隠し。
時折垣間見える、そういうところがちょっと可愛い。
「気をつけるよ」
素直に頷くと、彼は黙って俺から目を逸らした。
(……そういうの、新鮮なんだよね)
俺は密やかに肩を揺らしながら、静と共に部室に向かった。
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