11.変わったのは

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 俺は持っていたペットボトルを数口呷ると、自嘲めいた溜息と共に視線を落とす。そのまま目を閉じると、また別の静の言葉が頭に浮かんだ。  あれほど酔っていた中でのことだ。彼はきっと覚えていないだろう。だけど俺の中にははっきり残っている。  途中、口づけるかのように顔を寄せた時、それを拒むように静が言ったのだ。  〝俺もしばらく恋愛するつもりはないから〟  〝だからちょうどいいだろ〟  って。  俺は初めて肌を重ねた夜以降、一度も静にキスしていない。  だけどそれで正解だとも思っている。  だからその時もそのつもりだったわけじゃないけど、それでもその反応にはちょっと胸が痛くなった。  ……まるでアンタにできることなんて何もないって言われたみたいで。 「――あ」  不意に時計に目を遣ると、いつの間にか時刻はとっくに0時を過ぎていた。 (……今日で良かった)  些細なことかもしれないけれど、今は素直にそう思う。  こんな俺が言うのもなんだけど、せめて今日くらいは幸せな(いい)日にできれば俺も嬉しい。  君が忘れたいなら、覚えていないなら、俺も知らないふりをするから。  目が覚めたら、これだけは言わせてほしい。  ――誕生日、おめでとうって。
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