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「ぃ、っ――!」
その瞬間、縋るように伏せられていた静の肩が浮き上がり、引き攣れた悲鳴が部屋に響いた。
艶めかしく撓った背筋がびくびくと戦慄き、残されたもう一方の手が堪えるようにシーツを握りしめる。
俺はそっと顔を寄せ、宣告のように囁いた。
「大丈夫。ちゃんと気持ちよくなれるよ。――素面でも」
「や……っ、ぁ……、待っ……!」
抽挿を開始するのに、静の反応は待たない。
力任せに割り開かれた粘膜が、拒むみたいに収縮する。静も何度も頭を振った。
その全てに気付かないふりをして、俺は一方的に腰を律動させる。
(――ねぇ、静)
「い……っぁ、あ……!」
静の腕を掴む手に自然と力が入る。接合部を擦り合わせるようにしながら、もっと奥へと入りたいみたいに隘路の先を探る。
喉を反らせた静の口元から、飲み込み損ねた唾液が伝い落ちる。
(……もう、俺だけにしなよ)
俺は静の腕を解放し、その手で今度は彼の屹立に触れる。静の上体が再びシーツの上に崩折れても躊躇うことなく、
「っ、ゃ、待……、んんっ――!」
爪を立てるようにして雫を湛えた先端を割り、と同時に、不意打ちのように胎内からもそこを抉った。静は必死に声を噛み殺し、そのくせ堪らないみたいにとろりとした体液を溢れさせた。
「――ほら……悪くないだろ……?」
先へと促す俺の手の動きに合わせて、いっそう淫猥な水音が部屋に響く。誘われるように俺の動きも性急になる。
「ぁ、っ、――っ!!」
煽られるままに追い上げれば、静はひときわ胎内を引き絞らせて――やがて俺の手の中で白い飛沫を散らした。
それからまもなく俺も彼の中で達し、それを待っていたかのように、静は束の間意識を手放した。
「…………ねぇ、静」
そんな静の姿をどこか他人事のように見つめながら、俺はぽつりと言葉を紡ぐ。
触れればひくつくそのうなじに、そっと唇を押し当てて、
「いまは俺以外……他の誰も想わないで……」
決して聞かせてはいけない思いを、祈るように。
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