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……だって俺は、この期に及んで考えている。
ちゃんと上書きできたかなって。
君の中は、俺でいっぱいになったかなって。
現にそうできたのであれば、本望だとすら感じている。
(どれだけ自己中なのかな)
もっと大事にしたいのに。
もっともっと優しくしたいのに。
……例え君が、俺を見なくても。
その思いは嘘じゃないのに、一方でそれを偽善だと感じ始めている自分もいる。本当はもっと欲深いくせに――もっとずっと自分勝手で、利己的なくせにって。
そんなはずないと思っていためっきが、剥がれかけているのかもしれない。
「はぁ…………」
自分に当てつけるような溜息を重ねて、目の前のチープな灰皿に煙草の灰を落とす。再び咥えたそれを口端に添えたまま、背もたれに力なく身体を預けた。
(どっちにしても……今日はもう、誘えないな)
この期に及んで、クリスマスを一緒に過ごそうだなんて。
さすがにどの口が言うんだと一蹴されてしまうだろう。
見慣れない天井を見るともなしに見上げると、目の奥がじわりと熱くなった。それを隠すように瞑目し、フィルターを強く噛む。
唇の隙間から、絞り出すように呟いた。
「ばかだなぁ、俺……」
――来年の今頃、俺の隣に静はいないのに。
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