*13.君を欲してはいけない

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 ……だって俺は、この期に及んで考えている。  ちゃんと上書きできたかなって。  君の中は、俺でいっぱいになったかなって。  現にそうできたのであれば、本望だとすら感じている。 (どれだけ自己中なのかな)  もっと大事にしたいのに。  もっともっと優しくしたいのに。  ……例え君が、俺を見なくても。  その思いは嘘じゃないのに、一方でそれを偽善だと感じ始めている自分もいる。本当はもっと欲深いくせに――もっとずっと自分勝手で、利己的なくせにって。  そんなはずないと思っていためっきが、剥がれかけているのかもしれない。 「はぁ…………」  自分に当てつけるような溜息を重ねて、目の前のチープな灰皿に煙草の灰を落とす。再び咥えたそれを口端に添えたまま、背もたれに力なく身体を預けた。 (どっちにしても……今日はもう、誘えないな)  この期に及んで、クリスマスを一緒に過ごそうだなんて。  さすがにどの口が言うんだと一蹴されてしまうだろう。  見慣れない天井を見るともなしに見上げると、目の奥がじわりと熱くなった。それを隠すように瞑目し、フィルターを強く噛む。  唇の隙間から、絞り出すように呟いた。 「ばかだなぁ、俺……」  ――来年の今頃、俺の隣に静はいないのに。
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