15.聖なる夜に

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 待ちに待っ……。  ……いや、うん。  まぁ楽しみにしていた24日(当日)の午前11時。  静をアパートまで迎えに行って、軽めの昼食を取り、そこから俺の希望でとあるセレクトショップへ。  気になっていたコートを数枚試着して、最終的に静に選んでもらったのはネイビーのノーカラーロングコート。  Aライン気味でほどよくざっくりしたそれは、実は俺の中でも第一候補だった。  となれば迷うことなくそれに決定。その後の会計の時には、あらかじめ用意しておいてもらった別の包みも一つ、同じ袋の中に入れて貰った。……こっそりと。  だって今日はクリスマスなのだ。プレゼントの一つくらいしてもばちはあたらないだろう。  なのに車に乗るなり静は、「プレゼント……もしくれる気なら煙草にして下さいね」なんて先手を打ってくる。揶揄めかしてはいるが、あながち冗談でもなさそうに見えた。  心臓がどきりと小さく跳ねる。おかしいな。さっきのは見られていないはずだけど……。 「分かってるよ」  俺は当然のようにそう答えながら、その一方で件の包み(プレゼント)を思って密やかに苦笑する。  あれの中身は、俺が静のために選んだマフラーだ。クリスマスを一緒に過ごせると分かった翌日にはすぐに手配しに走っていた。   「俺手ぶらですからね」  アンタに見合うようなものなんてそうそう買えないので。  と、静が悪びれずに肩を竦める。  その仕草と言いように、俺は思わず微笑(わら)ってしまった。 「充分だよ」 「はい?」 「……いや」  だって君からのプレゼントはもう貰っているから。  俺は言葉を濁し、ただ笑みを深めた。  すると静は一瞬胡乱げに目を細めたけれど、結局それ以上は何も言わずに窓外へと視線を投げた。  俺が君から貰ったもの――。  それはクリスマス(今日)という日の、君の時間。  最後の最後でそれを叶えてくれた君に、俺はこの上なく感謝している。 (……でも、この分じゃプレゼント(あれ)……ほんとに受け取ってくれないかもしれないな)  まぁ、それならそれでいいか。  その時は自分で使おう。今日の思い出の品として。  俺は意外に清々しい気持ちで、次の目的地へと向けてアクセルを踏み込んだ。
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