15.聖なる夜に

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 *  *  途中、静の希望で立ち寄った俺の行きつけのワイン専門店。  店に入るなり、顔見知りの店員に声をかけられた俺は、ちょうど取り寄せたいものもあり少しばかり話し込んでしまった。  その間に、静は別の店員と選んだ一本の赤ワインを購入。  店に行きたいと行ったのも意外だったけれど、そうして静が自分からワインを買うのも何だか珍しい気がした。  ……もしかしたら今夜一緒に開けようとか思ってくれているのかな。  ややして車に戻っても、静は何も言わなかった。ただそれをそっと後部座席に置いただけだ。  その様子がかえって妙な期待を抱かせる。俺は焦れったいような擽ったいような心地で、次第に陽が傾きつつある西の空を横目にしばらく車を走らせた。  *  *  * 「なぁ、ここって……」  促されるままエントランスを抜け、エレベーターに乗り込むと、堪えかねたように静が口を開いた。  箱の中には俺と静しかいない。俺は小さく頷き、柔らかなランプが明滅するフロアパネルを指さした。 「ここのレストラン、予約してあるんだ」 「いや、聞いてない……」 「大丈夫だよ。服装もOKだし」  にこりと笑えば、静は「だから……」と溜息をつく。 「いつもの格好も似合ってるけど、そういうのもいいね」  よりセクシーに見える。  ……とは、もちろん口には出さないけれど。  少しだけ足を伸ばして訪れたそこは、上月(こうづき)グループという大手企業が展開するクラシカルな外観のホテル。  その上方階にあるレストランの席を俺が予約したのは、実は静と約束するより前のことだった。  だってぎりぎりだととれない可能性があるからね。最悪、一人でもいいと思って押さえておいたのだ。……ダメ元で。  だけど、静にはそのことを全く伝えてなくて――。
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