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ドレスコードはそれほどうるさくないはずだけど、いつものジーンズ姿ではちょっとどうかな、俺の服を貸すことになるかな、なんてぼんやり思ってたりはした。
利用を断られることはないにしても、その時の客層によっては少々浮いてしまうかもしれないなって。
それなのに、静の今日の格好は、白のハイネックインナーに濃いグレーのニットジャケット、パンツは黒。普段のラフなジーンズにダウンジャケットに比べると、随分きれいめにまとめられていた。
まぁ、俺はどちらかと言えばいつもの服装の方が好きだけどね。よく似合っているし。
とは言え、これはこれでもしかしたら、少しは気合いを入れてきてくれたのかな、なんて思えて嬉しくなる。
デート……とまではいかないまでも、一応、クリスマスという特別な日を、俺と過ごすんだって……ちゃんと意識してくれたのかなって。
* *
案内された席に向かい合って座り、学校の部室、過日に訪れた神社、先日の展望台から望めるものとはまた違った夜景を眺めながら、のんびりと食事を進める。
入店した時刻は17時頃だった。けれども、さすがクリスマスというべきか、俺たちが食事を始めた頃には、既に店内はほぼ満席となっていた。
本当は個室がとりたかったんだけどね。
でも、さすがにそれは引かれちゃうかなとかって……何となく選べなかった。
相手が女の子だったなら、そんなところで迷ったりはしないんだけど。
……いや、相手が静以外だったなら、かな。
真っ白なクロスが敷かれた丸いテーブルの中央には、暖色を基調とした花が飾られている。
食前酒から食後酒まで、おすすめのワインが数種類、料理に合わせて運ばれてくるフルコース。
それを知っただけで、「俺、場違い」って目で訴えられたくらいだ。やっぱり個室にしなくて正解だったんだろう。
とは言え、選んだコースに後悔はない。
このコースのドリンクは、基本ワインしか出てこない。もちろん、知っていて選んだのだ。
それを静が今更断れないことは分かっていたし、断れなければどうなるかも大体の予想はついていた。
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