15.聖なる夜に

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「俺、こういうクラシカルな雰囲気、結構好きなんだよね」 「へぇ……」 「え、知らなかった?」  ちらりと店内に視線を向けながら、あえて意外そうに言うと、静は持っていたグラスを揺らしながら、「知るかよ」と呆れたように笑った。  そのなんとも言えない表情に、釣られて俺も微笑(わら)ってしまう。そのまま俺は当たり前みたいに問いを重ねた。 「でも、静も好きだよね?」 「……は?」 「だから、アリアみたいな感じとか」 「……」  グラスを呷りかけていた静の手が一瞬止まる。その動きはすぐに再開されたけれど、中身を空にしたのち、聞こえてきたのはどこか言い淀むような声だった。 「…………別に」 「え? 何?」  俺は思わず訊き返していた。   すると静は少しだけ考えるような間を置いて、 「……まぁ、嫌いじゃねぇけど」  いっそう落とした声で、溜息混じりにそう言い直した。  ……いや、だから何でそこでそんな顔するの。  え、そんなに俺と好みが似てるって認めるのが不本意なの?  またしても何だか拗ねたみたいな表情(かお)をされて、俺は静の顔を見つめてしまう。 (あ……でも)  それにしては、そこまで機嫌が悪いわけではないのかな。言葉のわりに眼差しは柔らかいままだし、心なしか頬の赤みが増している……ような気もする。  これってもしかして、拗ねてるっていうより、どちらかと言えば照れてるってやつ……? 「なんだよ」  じっと見られていることに気付いた静が、今度こそ気に入らないみたいに口を尖らせる。 「……いや、なんでもない」  答えながら、俺もワインを呷る。その頬が、緩んでしまうのを隠すように。  案外、静の〝嫌いじゃない〟は〝結構好き〟ってことかもしれない。  もちろん、確信があるわけじゃない。単なる俺の思い込みかもしれない。だけどそう思う一方で、結局破顔してしまうのを止められなかった。
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