2.君の傍にいるということ

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「……見城さん?」  不意に声が届く。釣られるようにドアの方に目を向けると、 「まだいたんですね」  間もなく姿を見せたのは静だった。 「煙草の匂いが……」  静は独りごちるように呟いた言葉を途中で切って、室内を見渡した。  〝煙草の匂い〟――その言葉の意味を、俺はぼんやり考えた。  もしかして、匂いで俺ってわかったのかな……? たったあれだけの匂いで?  俺はまだ静の前で、そこまで吸っていたつもりもないのに……? 「一人ですか?」 「ああ、せっかくだし、みんなには花火大会に間に合うように帰ってもらったんだ」  煙草を指に取り、思わず淡く微笑んだ俺に、 「見城さんも一緒に行けば良かったのに」  何でもないみたいに君は言う。  その言葉と態度に、何故だか胸が少し痛む。口に残る煙草の味が、いつもより苦くなった気がした。  ……なんだろう、これは。 「俺はここを……もう少し片付けたかったから」  年末だしね。  よく分からない感覚に捕らわれ始めていた俺は、そう短く付け加えただけで、「君を待っていたんだ」とは言えなかった。  言ったところで、普段しているような軽口めいたやりとりなら、別段不自然でもなかっただろうに。  どうしてかな。その時の俺にはどうしてもそれができなかった。 「そうですか」  そっけない。  きわめてそっけなく返された声に、不覚にも笑顔が歪みそうになる。  それを誤魔化すように、俺は静に向かって、持っていた吸いかけの煙草を差し出した。
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