15.聖なる夜に

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「……ほんとにそれだけかよ」 「もちろんだよ」 「……」 「――って、言いたいところだけど……」  そんな静の反応がおかしくて、思わず含むような言い方をしてしまう。  すると静は今度こそ呆れ果てたように溜息をついた。 「まぁ、予約が取れなかったのは本当だよ」 「どうだか」 「いや、それは本当だって」 「」 「ああ、いや、だから……」  これもすでにそこそこ飲んでいるワインのせいだろうか。やけに絡むよね?  俺はこみ上げた笑いに小さく肩を揺らしながら、自分のグラスに目を向ける。  あぁ、どうしよう。何だか妙に気持ちが弾む。  そのせいかな。せっかく向かい合って座っているのに、静の顔が直視できない。  俺は誤魔化すようにグラスを手に取り、そのまま僅かに持ち上げて見せた。 「とりあえず、乾杯しようよ」  促せば、幸い静も大人しく――諦めただけかもしれないが――それに従ってくれた。  ゆっくりと掲げられたそれが、高さを揃え、キスをするみたいに近づいていく。  静かだけれど温かな、どこか非現実的な空気の中、 「――メリークリスマス」  待ちかねたような俺の声と共に、澄んだ音が軽やかに響いた。
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