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「ああ、でも俺、子供の頃からそんなものだったよ。友達からも、おめでとうって言われた記憶はあんまり……」
「それは春休み中だったからだろ」
「!」
ひ……日付まで知ってるの? 何で?
「いや、前にサークルの飲み会で、そういう話……出た、し…………」
思い切り顔に出てしまったのか、静が的確な答えを返してくれる。
けれども、その語尾はだんだんと小さくなって、最後の方には「しまった」とばかりに視線を逸らされてしまった。
……なるほど、静は静で今まで隠していたということか。ここで口にしてしまったのは、ワインのせいってところかな……。
確かに、サークルに限らず、飲みの席で誕生日の話が出ること自体は珍しいことじゃない。俺だって、新歓の時なんかにそういう話が出ていた、というだけの記憶ならある。静が知ったというのも、恐らくはその内のどこかでということだろう。
(でも、いつから知ってたんだろ……)
可能性だけなら、静自身の歓迎会――3年以上前――から知っていたということもある。あるにはあるけど……さすがにそれは希望的観測すぎるかな。
(……俺は全然覚えてなかったのにな)
いま俺が知っているのは、あくまでも君に直接聞いたからで。それもたまたま、君からそういう――誕生日に親がワインを送ってきたとかって言う――話が出たからだった。
なのに、君は覚えててくれたんだね。
4月5日という、昔から春休み中に当たるせいで、友人にも忘れられがちな俺の誕生日を。
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