15.聖なる夜に

13/13

199人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
(……どうしよう)  めちゃくちゃ嬉しい。 「まぁ、春休み(その時期)は、俺もアメリカ(向こう)に帰ってることが多かったしね。……でも、気にしてくれてたなんて嬉しいよ。ありがとう」 「別にそんな気にしてたわけじゃねぇけど……。ただ、俺の方は何度も祝ってもらってたから」 「……そんな大したことはしてないけどね」  上擦りそうになる声を堪えながら、努めていつも通りの笑みを貼り付ける。  自分のグラスにもワインを注ぐと、改めて静の正面に座り直し、 「プレゼントだって受け取ってもらえなかったし……消え物(煙草)しか」  俺はあえて揶揄めかすように、小さく肩を竦めて見せた。 「……最初にもらっただろ。ちゃんと」 「使い古しのジッポ?」 「十分だし。あれって中古でもそこらで適当に新品買うより高ぇだろ」 「うーん……まぁ、それはそうかもしれないけど」  俺はグラスをゆるりと揺らしながら、苦笑混じりに頷いた。  ……なんて、余裕のあるそぶりを見せてはいるけれど、内心はそれどころじゃなかった。  本音では今すぐ君を抱きしめたい。それくらい気持ちが高ぶっていた。  閉じ込めるみたいに抱きしめて、頬を寄せて、髪を撫でて、またぎゅっとして。  それから床でもベッドでも、そのまま君を押し倒し、キスの雨を降らすんだ。  そしてその戸惑いもあらわな双眸を見つめながら、ふわりと微笑みかける。  好きだよ。  …………って。  本当にそう言えたらいいんだけどな。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加