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(……どうしよう)
めちゃくちゃ嬉しい。
「まぁ、春休みは、俺もアメリカに帰ってることが多かったしね。……でも、気にしてくれてたなんて嬉しいよ。ありがとう」
「別にそんな気にしてたわけじゃねぇけど……。ただ、俺の方は何度も祝ってもらってたから」
「……そんな大したことはしてないけどね」
上擦りそうになる声を堪えながら、努めていつも通りの笑みを貼り付ける。
自分のグラスにもワインを注ぐと、改めて静の正面に座り直し、
「プレゼントだって受け取ってもらえなかったし……消え物しか」
俺はあえて揶揄めかすように、小さく肩を竦めて見せた。
「……最初にもらっただろ。ちゃんと」
「使い古しのジッポ?」
「十分だし。あれって中古でもそこらで適当に新品買うより高ぇだろ」
「うーん……まぁ、それはそうかもしれないけど」
俺はグラスをゆるりと揺らしながら、苦笑混じりに頷いた。
……なんて、余裕のあるそぶりを見せてはいるけれど、内心はそれどころじゃなかった。
本音では今すぐ君を抱きしめたい。それくらい気持ちが高ぶっていた。
閉じ込めるみたいに抱きしめて、頬を寄せて、髪を撫でて、またぎゅっとして。
それから床でもベッドでも、そのまま君を押し倒し、キスの雨を降らすんだ。
そしてその戸惑いもあらわな双眸を見つめながら、ふわりと微笑みかける。
好きだよ。
…………って。
本当にそう言えたらいいんだけどな。
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