*16.星影さやかに

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 ……あぁ、本当に俺は、静に対しては強気にいけなくなっているな。 「……何、だよ」  苦笑気味に漏らした吐息が、その耳を掠めたのか、くすぐったいように小さく首を竦めた静が、怪訝そうに俺を見た。  俺はとっさに微笑むと、 「いや……ほら」 「……?」  〝恋人みたいじゃない?〟  口を突きかけた言葉をすんでのところで飲み込んで、何でも無いみたいに言葉を換えた。 「……きれいだなぁと思って」 「あぁ、夜景? ……それはまぁ、確かに」  俺が眩しいみたいに目を細めると、静は窓の外へと視線を戻し、こくんと素直に頷いた。  ……いや、違うんだなぁ。  俺が本当に言いたかったのはそれじゃないし……きれいだと言ったのは君のことだからね。   「――ねぇ、静」  俺は改めて静の頭に頬を寄せ、おもむろにその腹部へと手を這わす。  薄付きながらも、しっかりと筋肉を纏った美しい身体。しなやかで無駄のないそれに、もう何度触れただろう。 「な、に……擽ったいんだけど」  続けて円を描くように動かせば、ひく、と静の呼吸が僅かに乱れた。  控えめな照明だけが頼りの、暗がりの中ではあるけれど、幸か不幸かお湯の透明度は高く、おかげで水面下でも輪郭が見えないわけじゃない。  お臍の上で手を止めて、確かめるようにその窪みを指で辿ると、 「ちょ……」  とたんに静の口から戦慄くみたいな吐息が漏れて、それがじわりと俺に火を灯す。 「――ねぇ、静」  俺は再度名を呼んで、その耳元で囁いた。 「ふれても、いいよね」 「……もう、ふれてるだろ」 「このまま……抱いてもいい?」 「っ……ここで……?」
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