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問うように言いながら、最初から答えは決めていた。
「……嘘。それはしない」
頬を静の頭に触れ合わせたまま、揶揄めかして翻すと、静の肩から僅かに力が抜けた。
……それはどっちの反応なのかな。
ほっとしたの? 残念なの?
もちろん、できることならすぐにでも君を抱きたいよ。
だけど、そんなふうに勢いに任せてしまったら、それこそそこで今夜は終わってしまうかもしれない。
こんなにも君を欲している俺が、一度だけで終われるとは限らないし……。それで君が逆上せてしまったら、流石にそれ以上無理をさせるわけにはいかないしね。
そうならないためにも……この、これからの長い夜を、君とゆっくり楽しむためにも。ひとまずここで一線を越えることだけはしないでいようって思ったんだ。
「なぁ…………当たってんだけど」
「当ててるんだよ」
だけど、君にも少しくらいは意識しておいてほしい。
「……ふれるだけなら、いいんだよね」
俺は開き直るように囁きを重ねると、「今更……」と呟いた静の声に笑みを深めながら、触れていた手のひらを腹部から更に下へと下ろしていった。
* *
「っん……ぁ、っ……」
お湯の中でも、滲んだぬめりはそこにとどまる。それを塗り広げるようにしながら、俺は不意に割り開いたその先端を指先で躙った。
他方の手は胸に這わせて、慎ましくもツンと尖った色づきを焦らすように撫でては転がしている。
そのたび静の身体が小さく震える。片腕を目元に押し当て、必死にその表情を隠そうとする。……いつも通りに。
そのわりに声が堪えきれていないのは、やっぱりワインのせいだったりするのかな。
一応抑えようとしているのはわかるけど、そこはほら、ここは浴室だから。僅かな吐息すら響くのに、それが音にならないはずがない。
(……可愛い)
「ぁ……っ、も、放……っ」
「いいよ、このままイって。どうせ俺と君しかいないんだから」
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