2.君の傍にいるということ

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 *  *  * (……あ)  クリスマス当日の昼下がり、遅めの昼食のために立ち寄った近所のファミレスに、俺は静の姿を見付けた。  その店は、一見そうと分からないようなクラシカルな外観――アンティークな装いが特徴的なレストラン〝アリア〟――ドリンクバーはないものの、値段の割に味も良く、家族連れや若い学生にも人気の店だった。  酒やテイクアウトできるメニューが豊富なところもポイントが高いと、いつだったか雑誌に掲載されているのを見たこともある。  ちなみに、評判なのはスタッフの顔もいいからだと……言っていたのは同じ科の女の子だったかな。 「――静」  その窓際の席で、独りコーヒーカップを傾けていた彼に、俺はスタッフに了承を得てから声をかけた。 「珍しいね。君が一人で……なんて」  静は意外と自炊するし、そうでないなら、最寄りのコンビニ――セレストアと言う――で買って済ませることが多い。外食を独りで、というのはあまり気が進まないらしく、俺が独りでバーに行ったりすることに、妙に関心を示されたこともあった。  だからよけいに驚いたのだ。  今までこの店(アリア)には何度か一緒に来ていたけれど、それでも彼が独りで利用することはないんだろうなって、勝手に思い込んでいたから。 「……見城さん」  俺の声に顔を上げた静は、一瞬目を瞠り、それから申し訳程度に会釈した。 「どうしたの。せっかくのクリスマスに……」  俺は拒絶されないのをいいことに、そのまま同じテーブルの向かい席に腰を下ろす。視線の先で、静は伏せるように視線を落とし、小さく息をついた。その面持ちは、何だか元気ないというか、いつになく疲れているようにも見える。 「何かあった?」 「……大したことじゃないです」  静は抑揚なく呟き、ゆるりと視線を窓外に向ける。
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