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29日の昼下り、俺はクリスマスの日にも立ち寄っていたワインショップに顔を出した。取り寄せを頼んでいたものが届いたとの連絡があったからだ。
入荷までは少しかかるかもしれないと聞いていたため、それだけでもちょっと得した気分になった。
何だかいいことが続いている気がする。
年始にひいたおみくじのことを思い出す。静と共におなじ結果だったあのおみくじは、今でも財布の中に入っている。
偶然なのはわかっているが、何となく上がる気分に笑みが滲む。
しかも、〝いいこと〟はそれだけに終わらなかった。
「これ、次に見城さんが来られたときに渡してほしいって……」
「……何? ……ワイン?」
「はい」
「え……っえ? どういうこと?」
会計の際、顔見知りの店員から、目的の物とは別の紙袋を差し出された。
持ち上げかけていた自分の袋を一旦カウンターに下ろし、受け取ったその中身を覗き込む。
「このラッピング……」
紙袋はマットな黒。けれども、中に入っていた箱を包んでいるのは、抑えめながらも赤い包装紙。そこに控えめに飾られたリボンは緑だ。
クリスマスカラー……。
「サプライズだと思います」
「サプライズ?」
「はい。先日、一緒にいらっしゃったお友達からの」
「……!」
あからさまに目を丸くした俺に、にこりと微笑んだ店員が教えてくれた。
渡すのは、次に俺が来店したとき。決して急がなくていいと念を押すように言われたというのは、まぁ想像がつかなくもない。
問題はその前だ。
だってこれを用意してくれたのは静だった。
静が俺のために、わざわざこれを注文してくれていたというのだ。
(いつの間に……!)
確かにあの日この店を訪れたとき、俺はしばらく静と離れて話し込んでいた。
その隙に手配してくれたということだろうか。いや、実際そうらしい。目の前の店員がそう言っている。
だけど、だけど――。
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