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(静が、俺に……?)
プレゼント?
あれほど、何も持ってない、用意してないと言っていたのに?
俺からのマフラーだって、「もうこれ以上貰えません」って……受け取ってくれなかったのに?
「開けるのはお帰りになってからの方がいいと思いますよ」
いまにも開けてしまいそうに見えたのだろうか。
くすりと笑みを深めながら、カウンターに置かれていたもう一方の袋を差し出してきた店員に、俺ははっとしたように頷いた。
「……そうだね。そうさせてもらうよ」
せっかく静が……あの彼が、俺のために選んでくれたんだもんね。ここはこの目で、ゆっくり確かめなければ。
……なんて、実際には中身なんてもう何だって嬉しいに決まってるんだけど。
「ありがとう!」
俺は2つの紙袋をしっかり手に下げると、いつになく明るい挨拶を残し、急くように店を後にした。
* *
あの日、静が俺の目の前で買っていたワインは、普通に自分用だと言って開けてはくれなかった。
まぁ、俺の立てていたプランを知って、そう変更したのかもしれないけれど。
だからちょっと、寂しいなぁなんて思ってはいたんだよね。
でも、それを口実にまた誘ってくれたらいいなぁなんて、淡い期待も抱いていた。
プレゼントは君の時間だけで十分だ。
そう思うのも嘘じゃないのに、心の奥底ではそれだけでは足りないと思っているのかもしれない。
だからって、そんなのはあくまでも俺の勝手な願望で……必ずしも実現しない想定で。これ以上、君から何かを貰おうだなんて、本気で思っているわけじゃない……。
なのに……なのにまさか、
(静が俺に、サプライズだなんて――)
自宅に戻り、着ていたコートもそのままに、俺はリビングのローテーブルに紙袋を置くと、半端にソファに腰を下ろした格好で、早速中身を取り出した。
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