18.夢の続きを【Side:見城将人】

7/16

199人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
 俺はその日、静が早番だと知っていて、昼食を食べにアリアに行った。  そして客足が少し落ち着いた頃、例によって水を注ぎに来てくれた君に声をかけた。  今年も、初詣一緒にどうかなって。  正直、OKを貰えるのは当たり前だと思っていた。  そんな気がしていたのだ。なのに君は「すみません」と首を横に振った。  俺は本当に浅はかだった。 「弟が……事故ったっていうので、一応」  しかも、そんな理由を聞かされるともう何も言えない。  それどころか、 「弟……いたんだ」  次に口を突いたのは、最低にもたったそれだけ。  本来なら、何より「弟さん大丈夫?」と言うべきなのに、それを継ぐことすらできなかった。   「まぁ、バイクで単独って話ですし、命に別状はないらしいんですけど、一応数日は入院らしくて」  すると静が、まるで俺の心を読んだみたいにそう教えてくれた。 「そう……そうか。なら、良かった……いや、ごめん。良かったっていうのもおかしいか」 「いえ、実際良かったですから。それだけで済んで」  一応、詳しい検査結果はまだらしいですけど、と、淡々とした声と口調で言う静に、俺は何とか話を合わせる。努めて平静を装い、傍らに置いてあった食後のコーヒーを飲んでみたけれど、中身なんてほとんど残っていなかった。 「……じゃあ、えっと、今日……から?」 「いえ、明日からにしました。明日の午前中に出て、アリア()が休みの間……三日まで」 「そう……そうか」
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加