199人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
* * *
大晦日の日、妙に暇をもてあましていた俺は、久々に適当な相手を探そうかと考えたりもした。
他にやることがないわけではないのだ。翻訳の勉強だって、しすぎて困ることはない。モデルの方の仕事も、春以降、既に決まっているものもある。そのために起用してくれる先の傾向や雰囲気などをもっと知っておかなければとも思う。
だけど、どうしてもそんな気になれない。何もやる気になれないのだ。
昼過ぎからずっと、俺はリビングのソファに寝転がり、ただ煙草を吹かしていた。
傍らのテーブルには冷めたコーヒー。朝も昼も、何となく億劫で食事もとっていなかった。
……結局、外へと出かけるのもやめた。
以前は簡単にできていたことが、できなくなっている。一夜限りの――なんて軽く考えてはみたものの、やはりいまは静以外は抱けない――抱きたいと思えなかった。
「――寝てたのか」
気がつくと、すっかり陽が落ちていた。
テーブルの上の灰皿には、長く伸びた灰があった。吸いかけで置いたままになっていたらしい。火は完全に消えていた。
俺はおもむろに立ち上がると、まっすぐワインセラーの方へと足を向けた。
「せっかくだし……飲ませてもらおうかな」
せめて少しでも君を感じられるように。
これだって、本当なら君と一緒に開けたかったけど……。
取り出したのは、静から貰ったクリスマスプレゼント。
俺の誕生年の――未開封のそれに目を落とし、自分の誕生年のラベルの表面をそっと撫でる。
最初のコメントを投稿しよう!